数年前から、テレビや雑誌などで「インナーマッスルを鍛えよう!」という言葉を目や耳にする機会が増えました。そもそもインナーマッスルとは、どこの筋肉を指しているのでしょうか。また、混同されやすい「体幹」という言葉との違いや、アウターマッスルとの違いについてもくわしく解説していきます。これからトレーニングを検討している方や、すでにトレーニングをしている方も、ぜひ最後までご覧ください。
インナーマッスルとは
トレーニング用語としてもよく使われるインナーマッスル。何となく聞いたことはあるけど、くわしくはよく分からないという方も多いのではないでしょうか。インナーマッスルとは具体的に身体のどの部分を指しているのか、また、身体のなかでどのようなはたらきをするのか、紹介します。
●体の深部にある筋肉
インナーマッスルとは、身体の比較的深い部分にある筋肉の総称です。これらの筋肉は「深層筋」とも呼ばれています。そのため、見た目でインナーマッスルが働いていることを確認するのは、なかなか難しいかもしれません。しかし、人間の基本な動きである「正しい姿勢の維持」「なめらかな動作あのサポート」「内臓の正しいはたらきを促す」など、とても重要な役割を果たしています。
●インナーマッスルと「体幹」の違い
よく混同されやすい言葉として「体幹」という言葉があり、フィットネス関連の雑誌、書籍などでは「コア」とも表現されています。ずばり体幹とは、人体の頭・腕・脚以外の胴部分を指しています。体幹にある筋肉の一部がインナーマッスルであり、インナーマッスルを含めた身体の幹となる部分のことなのです。すなわち、インナーマッスルは「深さ」を意味し、体幹は胴という「場所」を示しています。
また、体幹は「天然のコルセット」とも表現されます。スポーツをしている方や体を酷使する仕事の方などにとって、体幹を意識しながらトレーニングすることが大切であるといわれます。これは、インナーマッスルを含めた体幹を意識してトレーニングすることで、重要なバランス力が身につき本来の力を発揮しやすくなる、という効果も期待できるため、体幹が注目を浴びています。
体の各部分にあるインナーマッスル
インナーマッスルは、体幹という言葉とセットで使われることが多いため、体幹部分にしかないと思われがちです。しかし、実は腹部や背部など身体の幹となる部分だけでなく、腕や脚など身体のあらゆる部分に存在しています。それぞれの部分のインナーマッスルについて、くわしく見ていきましょう。
●体幹にあるインナーマッスル
前述したように体幹は「身体の胴部分」のことでした。この胴部分にあるインナーマッスルとして、
・腹横筋(ふくおうきん)
・横隔膜(おうかくまく)
・骨盤底筋(こつばんていきん)
などがあります。
腹横筋は、腹筋のもっとも深いところにある筋肉のことを指します。体幹を安定させたり、腹部を引き締めて腹圧をかけ、呼吸・排泄をサポートしたりする役割があります。
呼吸をするときに使われる筋肉を呼吸筋と呼びます。呼吸筋のうち代表的なものが、横隔膜です。横隔膜は名称に「膜」とありますが、れっきとした筋肉で、肋骨の下部に位置し横長のドーム状に横たわる薄い筋肉です。息を吸うときは横隔膜が下がって肺が膨らみ、息を吐くときは横隔膜が上へ持ち上がって肺がしぼみます。そのため、腹式呼吸など横隔膜をしっかり使う呼吸を行うことで、呼吸が深まりリラックス効果などが期待できます。
横隔膜のトレーニングに関してはこちらの記事でわかりやすくまとめておりますので、合わせてお読みくださいませ。
横隔膜も立派なインナーマッスル!鍛えるメリットとトレーニング方法
最後に、体幹にあるインナーマッスルとして、骨盤底筋があります。骨盤底筋は、骨盤の底にハンモック状についている筋肉のことを指します。この筋肉が、膀胱や子宮などの臓器を下から支え、排尿や排便をコントロールしています。骨盤底筋の動きは横隔膜とも連動していて、息を吐くと横隔膜が上がり、同時に骨盤底筋も引き上がります。
また、出産後の女性の身体は、妊娠と出産によってこの骨盤底筋が引き伸ばされ傷つき、ゆるんでしまっている状態にあります。そのため、骨盤底筋を意識的に鍛えることで、尿もれなどのトラブルを予防、改善することが期待できます。
●肩関節にあるインナーマッスル
肩関節にあるインナーマッスルは回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)、ローテーターカフと呼ばれ、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)、小円筋(しょうえんきん)の4つの筋肉を指します。肩関節にあるこれらのインナーマッスルは、肩関節の安定に作用しています。そのため、このインナーマッスルを鍛えると、肩関節の動きをスムーズにしたり、痛みやけがを予防したりするためにも役立つといわれています。
●股関節にあるインナーマッスル
股関節にあるインナーマッスルには、腸腰筋(ちょうようきん)と深層外旋六筋(しんそうがいせんろっきん)などがあります。腸腰筋はそけい部にある筋肉で、深層外旋六筋は骨盤と足の骨をつなぐ小さな筋肉群の総称です。どちらの筋肉も、股関節の安定や、歩行の安定に大きく影響しています。
インナーマッスルとアウターマッスルの違い
ここまで、身体の各部のインナーマッスルについてくわしく見てきました。そこから少し視点を変えてみると、インナーマッスルに対してアウターマッスルという言葉もあります。
ここではインナーマッスルとの違いや、アウターマッスルのはたらきについて解説します。
●アウターマッスルとは
アウターマッスルは体の表面に位置し、皮膚の上から触ることのできる筋肉を指しています。そのため、インナーマッスルが深層筋と呼ばれるのに対してアウターマッスルは表層筋と呼ばれています。
特徴の一つとして「鍛えたい部分を意識的にトレーニングしやすい」ことがあげられます。見た目に分かりやすい筋肉のため、年齢とともに衰えやすいのもアウターマッスルです。
また、ボディメイクをするならアウターマッスルを動かすことが有効でしょう。
●インナーマッスルとアウターマッスル、どちらを鍛えればよいか
インナーマッスルとアウターマッスルは、筋肉の機能や役割が違うため、それぞれの筋肉を鍛えることによって与える身体への効果や影響にも違いがあります。
また、インナーマッスルは、アウターマッスルを鍛える通常の筋トレで鍛えることは難しいといわれています。しかし、インナーマッスルとアウターマッスルもお互いに作用してはたらいているため、どちらか一方を鍛えてもバランスが崩れケガに繋がる可能性などもあります。
どちらの筋肉もバランスよく使っていくことが、身体の安定性にもつながっていきます。
こちらの記事でもインナーマッスルとアウターマッスルについてご紹介しているので、ぜひご覧ください。
インナーマッスルとアウターマッスルを同時に鍛える?はたらきや特徴の違いとは
インナーマッスルは身体の深いところにあり、姿勢保持や内臓のはたらきを促すために作用
インナーマッスルとは身体の深いところにある筋肉で深層筋のことを指していましたが、インナーマッスルには別名がたくさんあり、ほかにも「姿勢保持筋」「ローカル筋」とも呼ばれています。
見えない場所にある筋肉ですが、アウターマッスルとともに働いて、正しい姿勢の保持や動作のサポート、内臓の正しい働きを促すなど重要なはたらきをします。
そのため、自分の理想としている身体や目的に合わせて、インナーマッスルとアウターマッスル、どちらもバランスよく鍛えることが大切です。
インナーマッスルの具体的なトレーニング方法はこちら記事で紹介しているので、参考にしてみてください。