緊張や不安、ストレスを感じたとき、無意識に呼吸が浅くなります。また、呼吸をつかさどる呼吸筋は老化によって衰えるため、息苦しさや疲れやすさにつながることがあります。
そこでおすすめなのが「呼吸筋ストレッチ体操」です。この体操は、呼吸に必要な筋肉をストレッチ(伸展)したり収縮したりする体操です。呼吸筋の柔軟性を高め、深い呼吸を促します。
今回は、呼吸筋ストレッチ体操の方法とその効果について解説します。「無意識に呼吸が浅くなっている」「疲れやすい」という方はぜひ実践してみてくださいね。
呼吸筋ストレッチ体操の豆知識
まずは、呼吸筋とはどのような筋肉なのか見ていきましょう。また、ストレッチ体操とはどのような体操なのか、呼吸筋ストレッチ体操がおすすめである人の特徴についても解説します。
● 呼吸筋とは
呼吸において、鼻や口から入ってくる空気は気道や気管を通って肺へと送り込まれます。肺では空気中の酸素を身体に取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外に出すはたらきをしています。
しかし、肺は自分の力で空気を吸い込んだり吐いたりすることはできません。肺は胸郭という肋骨で覆われた部分に取り囲まれていて、この胸郭が広がることで空気が入り、胸郭が狭くなることで空気が排出されます。このように胸郭を動かし、呼吸に関わる筋肉のことを「呼吸筋」と呼びます。
呼吸筋には、空気を吸うための筋肉「吸息筋(きゅうそくきん)」と吐くための筋肉「呼息筋(こそくきん)」の2種類があります。おもな吸息筋は、横隔膜と外肋間筋です。また、おもな呼息筋は、腹筋と内肋間筋です。
なかでも呼吸活動の7割近くを担っているといわれる呼吸筋が「横隔膜」です。息を吸ったとき、横隔膜が収縮してぐっと下がります。それによって、胸郭のスペースが広がり、ふくらんだ肺の中へ空気が入って行きます。息を吐くときは、横隔膜も上にあがり、肺も縮みます。肺が縮むことで、肺の中の空気が外へ押し出されます。
このようなメカニズムから、深い呼吸を行うためには、横隔膜の動きや呼吸筋の柔軟性を高めることが重要であるといえます。
● 呼吸筋は加齢とともに衰える
呼吸筋は、20歳台をピークに加齢にともなってかたくなって衰えるといわれています。呼吸筋がかたくなった状態では胸郭の動きが制限されてしまうため、呼吸の質が落ちてしまうのです。
● ストレッチ体操とは
ストレッチ(stretch)とは「伸ばす」という意味を持ち、ストレッチ体操とは身体の筋を伸ばす柔軟体操のことを意味します。身体を鍛えることに目的がある筋トレとは異なり、ストレッチ体操は、身体をリラックスさせたり、身体を整えたりする目的があります。
ストレッチ体操を行うことで、筋肉の柔軟性が高まり、関節の動きが制限されることなく、可動域が高まる効果があります。
また、人によって、もともと持っている身体の柔軟性は違います。そのため、ストレッチ体操は、それぞれ柔軟性に応じて、個人にあったストレッチ方法を行うことが大切です。
● 呼吸筋ストレッチ体操はこんな人におすすめ!
呼吸筋ストレッチ体操は以下のような特徴をもつ人におすすめです。
- 呼吸が浅くなっていると感じている人
- 息苦しさを感じている人
- 疲れやすい人
- 不安やイライラを感じやすい人
- デスクワークが多い人
- 猫背や前屈みの姿勢になりがちな人
このような特徴にあてはまる人は、次項以降でお伝えする「呼吸筋ストレッチ体操」を積極的に取り入れてみましょう。
呼吸筋ストレッチ体操のやり方
さっそく、具体的な呼吸筋ストレッチ体操のやり方を見ていきましょう。今回は、首まわりと、肋骨や胸骨で囲われた部分である胸郭、体側のストレッチをご紹介します。
● 首まわりのストレッチ
こりを感じやすい首の筋肉ですが、首には息を「吸う」ときに使われる筋肉が集まっています。この首まわりの筋肉をほぐすストレッチをご紹介します。
(やり方)
1. 足を肩幅程度に開きまっすぐ立つ、またはいすに座る
2. 片方の腕を斜め下に伸ばし、頭を腕とは反対側に倒す
3. 鼻からゆっくり息を吸う
4.口からゆっくり息を吐きながら、頭をもとの位置に戻す
5. 反対側も同様に行う
左右それぞれ5〜10回行いましょう。
● 胸郭のストレッチ
肺を覆っているかご上のスペースである胸郭。胸郭の可動性を高めることは呼吸をするうえで非常に重要であるといわれています。
(やり方)
1. 足を肩幅程度に開きまっすぐ立つ、またはいすに座る
2. 両手を身体の後ろで組み、鼻から息を吸う
3. ゆっくり口から息を吐きながら、手のひらで床を押すように押し下げる
4. 身体の全面を伸ばす
5. 息を吸いながら、手と身体をもとの位置に戻す
10〜15回行いましょう。
● 体側のストレッチ
意識しないとあまり伸ばすことのない体側。体側には腹斜筋など「吐く」ための筋肉があります。
(やり方)
1. 足を肩幅程度に開きまっすぐ立つ、またはいすに座る
2. 片方の手を頭の後ろにあてて、もう片方の手は腰に添える
3. 鼻からゆっくり息を吸う
4. 口から息を吐きながら、ひじを持ち上げるように体側を伸ばす
5. 息を吸いながらもとの位置に戻す
6. 反対側も同様に行う
左右それぞれ5〜10回行いましょう。
● 呼吸筋ストレッチ体操のポイント
しっかり効果を時間するうえで、呼吸筋ストレッチ体操を行う間の呼吸も重要となります。そのため、ゆっくりと正しい呼吸をしながら呼吸筋ストレッチ体操を行うようにしましょう。
また、どんな運動にもいえることですが、ストレッチ体操の効果は一朝一夕で効果が出るものではありません。継続すれば確実に身体が変わってきますので、まずは2週間、継続して行うようにしましょう。
呼吸筋ストレッチ体操の効果
呼吸筋ストレッチ体操によって以下のような効果が期待できます。
- 深い呼吸ができるようになる
- 肺や胸壁の老化予防
- 不安やストレスの軽減
3つの効果ついて、それぞれくわしく解説します。
● 深い呼吸ができるようになる
呼吸筋ストレッチ体操によって呼吸筋の柔軟性が高まると、肺が広がりやすくなり、楽に呼吸ができるようになります。「呼吸を楽にする」というと口や鼻に意識が向きがちですが、胸部や首にある呼吸筋のストレッチ体操を行うことによって深くゆったりとした呼吸を行うことができるでしょう。
● 肺や胸壁の老化予防
呼吸筋ストレッチ体操を行うことで、肺や胸壁の老化を予防することができます。呼吸機能の衰えは身体活動を制限してしまうため、呼吸機能をできる限り維持し、健康的に年をとることが高齢化社会においては重要であるといえます。
● 不安やストレスの軽減
呼吸筋ストレッチ体操は、呼吸機能の改善効果に加えて、不安やストレスの軽減にも役立ちます。
不安やストレスを感じる状態が続いたとき、呼吸が浅く速くなり、呼吸が乱れるという経験をしたことはないでしょうか。また、ストレスを感じると身体の筋肉が緊張状態となるため、呼吸筋をやわらかくし、深くゆったりとした呼吸を促す呼吸筋ストレッチ体操がおすすめです。
できる範囲でストレッチ体操を継続してみよう!
日ごろから呼吸筋ストレッチを取り入れることで、深い呼吸ができるようになり、肺や胸壁の老化予防、不安やストレスの軽減にも繋がります。毎日少しの時間でも構いませんので、ストレッチ体操を継続して行ってみてください。