私たちの呼吸をつかさどる呼吸筋は、意識しないと鍛えることが難しい部分でもあります。また、呼吸筋は手足の筋肉と同じようにトレーニングによって鍛えることができます。
そこで今回は呼吸筋トレーニングのやり方と効果、トレーニングを行う際のポイントを解説します。普段から「呼吸が浅くなっているな」と感じる方や、疲れにくい身体を手に入れたいという方はぜひ参考にしてみてくださいね。
呼吸筋とは
呼吸筋とはどのような筋肉なのでしょうか。くわしく見ていきましょう。
● 肺を取り囲む筋肉
呼吸筋とはその字のごとく、「呼吸をつかさどる筋肉」です。
私たちが呼吸をするときに重要な役目を果たす肺。肺は、空気中の酸素を身体に取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を排出しています。しかし、肺自体の力では空気を吸い込んだり、吐いたりすることができません。肺のまわりの筋肉がはたらくことで、肺が広がったり縮んだりします。これらの筋肉が呼吸筋です。
呼吸筋はたくさん存在しますが、代表的な呼吸筋は、みぞおちの奥にある「横隔膜」と肋骨の間にある「肋間筋」です。
横隔膜が縮むと胸のスペースが広がり、肺の中に空気が入って息を吸うことができます。反対に、横隔膜が緩んで胸のスペースが縮むと、肺の中の空気が押し出され息を吐くことができます。
また肋間筋は肋骨の間にある筋肉で、肋骨の動きを補助したり、呼吸を補助したりします。
呼吸筋トレーニングの効果
手足の筋トレを行うのと同じように呼吸筋も鍛えることができます。呼吸筋を鍛えるとどのような効果があるのでしょうか。
ここでは
- 深い呼吸ができるようになる
- 持久力が向上する
- 自律神経が整う
という3つの効果についてそれぞれ解説します。
● 深い呼吸ができるようになる
呼吸筋トレーニングによって、横隔膜などの呼吸筋をしっかり使った深い呼吸ができるようになります。深い呼吸ができるようになると身体のすみずみまで酸素が行き渡り、代謝のアップや集中力のアップなど心身ともに良い影響を与えます。
逆に、呼吸筋が動かず、凝り固まった状態にあると、呼吸困難感が強く、浅い呼吸になることがわかっています。
● 持久力が向上する
呼吸筋トレーニングで得られるメリットが、持久力のアップです。持久力とは、長時間にわたり身体を動かし続けられる力のこと。私たちの身体は、呼吸によって酸素を取り込み、さまざまなエネルギーを作り出しています。つまり、酸素をより多く体内に取り入れられることは、運動エネルギーもより多く作り出せるということになります。
また「肺活量」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。肺活量とは、空気を胸いっぱいに吸い込み、それをすべて吐き出したときに肺の中を出入りする空気の量のことです。この肺活量を高め、より多くの酸素を身体に取り込むことができるようになればなるほど、運動強度の高いスポーツを長時間行うことができるといえるでしょう。
● 自律神経が整う
緊張したりストレスを感じたりした場面で深い呼吸をするとリラックスできた、という経験はないでしょうか。横隔膜には自律神経がたくさん集まっているため、横隔膜をしっかり使った深い呼吸を行うことで、自律神経に直接刺激を与えることができます。
自律神経は全身のさまざまなはたらきをコントロールしています。深く呼吸をして自律神経のバランスを整えることで、リラックス効果や不眠、ストレスの解消、心身の健康を保つことにもつながっていきます。
呼吸筋のトレーニング方法
ここでは呼吸筋のトレーニング方法として
- 筋トレ
- 呼吸法
- 呼吸筋トレーニングデバイス「エアロフィット」
の3つをご紹介します。
● 筋トレ
呼吸筋もまた、筋トレによって鍛えることができます。なかでもお腹まわりを鍛える体幹の筋トレを行うことがおすすめです。体幹とは、首から上と腕、足を除いた胴部分のことを指します。体幹の筋トレでは呼吸に関わる筋肉が鍛えられると同時に、身体の軸をしっかりと支えられるようになるので身体の土台が安定するでしょう。
たとえば、フォームの改善やケガの予防、運動時のパフォーマンスを向上させることなどが期待できます。そこで今回は、体幹の基本的な筋トレであるプランクをご紹介します。
(やり方)
1. うつ伏せになって床にふせる
2. 両ひじを90度に曲げて、肩の真下にくるように床につける
3. つま先をついて身体を浮かせる
4. 頭からかかとまで一直線になるようにキープする
20秒×3セットを目安に行いましょう。
● 呼吸法
多くの人はお腹と胸、どちらか一方で行う呼吸が多くなっています。しかし、呼吸の効率を上げるためには、お腹と胸どちらも同じように使い、胸郭もしっかり動かすことが大切です。
中でもお腹を使った「腹式呼吸」は、横隔膜を鍛えるために最適な方法のひとつです。
(やり方)
1. 背すじを伸ばして、ため息をつくように身体の中の空気を息を吐き出す。
2. ゆっくり息を吸うときに、お腹を膨らませ、胸郭のスペースを最大限にする。
3. 息を吐くときにはお腹をへこませ、胸郭のスペースを小さくして肺の中の空気を外へ押し出すイメージ。その際に骨盤底筋も引き上げられていることを意識して行う。
一方、胸で呼吸を行う「胸式呼吸」は適度な緊張感を与え、日頃、私たちが無意識に行っている呼吸です。腹式呼吸も胸式呼吸も、どちらが正しいというものではありません。両方併用して行うことで、効率よく深い呼吸を行い、身体の機能を活性化させましょう。
● 呼吸筋トレーニングデバイス「エアロフィット」
最後に器具・グッズを活用した呼吸筋トレーニングをご紹介します。呼吸筋トレーニングに役立つ器具・グッズが、呼吸筋トレーニングデバイス「エアロフィット」です。
エアロフィットは口にくわえてゆったりとした呼吸を繰り返すことで、呼吸筋に直接刺激を与えることができます。トレーニングは1日5~10分程度で、ご自宅でテレビを見ながらなど、好きなときに好きな場所で行うことができます。
さらに、エアロフィット専用のアプリも開発されており、デバイスをスマートフォンなどのモバイル機器とBluetooth接続することで、トレーニング結果をアプリで記録、管理することができます。アプリではご自身の肺活量と好みに合わせて、リラックスできるトレーニングメニューからハードに鍛えるトレーニングメニューまでトレーニングを提案してくれます。年齢、身長、体重でみたときの肺活量の平均値も知ることができるので、ぜひトレーニングの参考にしてみてくださいね。
呼吸筋のトレーニングを行う際のポイント
呼吸筋のトレーニングを行う際のポイントとして
- 正しい姿勢で行う
- こまめな水分補給を
- 無理はしない
- 続けることが大切
の4点を解説します。
● 正しい姿勢で行う
呼吸筋トレーニングを行う際は、正しい姿勢を意識しましょう。姿勢が悪く猫背になっていると、背中が丸まり、胸が閉じている状態に。この状態では、肺を圧迫してしまい、肺をしっかり膨らませた深い呼吸を行うことはできません。
呼吸筋トレーニングを行う際は、目線を上げて姿勢を正します。デスクワークなどで肩が前に巻き込まれているような状態であれば、肩を後ろに引き下げ、胸を開いてみましょう。
● こまめな水分補給を
呼吸筋トレーニングでは通常のトレーニングよりもダイナミックな動きが少ないため、水分補給を忘れがちです。しかし、空気を吐き出すと同時に、体内の水分も外に出ています。めまいや頭痛、吐き気などの原因にもなるので、こまめに水分を補給しながらトレーニングを行いましょう。
● 無理はしない
呼吸筋トレーニングでは、酸素を思いきり吐き出すことを繰り返します。慣れないうちはよりめまいや頭痛、吐き気などを引き起こしてしまうケースもあるので、決して無理はしないようにしましょう。
● 続けることが大切
呼吸筋トレーニングは一度きりで効果が出るものではなく、継続的に行うことが大切です。1日数回でもかまいませんので、できれば毎日、呼吸筋トレーニングを取り入れるようにしましょう。「朝起きたら5回」「夜寝る前に5回」など、トレーニングを行うタイミングをあらかじめ決めておくと習慣化しやすいかもしれません。
呼吸筋トレーニングを継続し、QOLの向上に役立てよう
人間は1日平均2万回も行っているといわれている呼吸。呼吸筋は加齢により衰えるため、呼吸筋トレーニングによって鍛えることが大切です。
呼吸筋トレーニングを行うことで、深い呼吸ができるだけでなく、持久力のアップや心の安定など、さまざまなメリットが期待できます。
今回、ご紹介したトレーニングのやり方を参考に、自宅や外出先でも気軽に呼吸筋トレーニングを取り入れてみてくださいね。呼吸筋のトレーニングを継続し、QOLの向上に役立てましょう!