家族から「いびきがうるさくて眠れない」といわれたことがある人や、家族のいびきがうるさいと感じている人は、少なからずいるでしょう。いびきは「よく眠っている証拠」などと誤解されている場合がありますが、実はよく眠れない要因の一つでもあります。
また、習慣的にいびきをかく子どもは、集中力に欠け学校の成績が低いという研究報告もあります。いびきを放置しておくと「睡眠時無呼吸症候群」など深刻な問題になることも……。
そこで今回はいびきが発生するメカニズムやいびきの原因について解説します。いびきを軽減するための方法についてもお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください!
いびきの正体とは
そもそも人はなぜいびきをかくのでしょうか。まずは、いびきの原因とともに、いびきをかきやすい人の特徴をご紹介します。
● 人はなぜいびきをかくの?
いびきとは寝ているときに発する「呼吸による雑音」のこと。人ののどには気道があります。気道が空気の通り道になり、呼吸ができます。寝ているときは舌やのどのまわりの筋肉もゆるむため、睡眠中にこの気道に舌が落ち込んだりして気道が塞がれます。呼吸の時に塞がれた部分からの空気の出入りの際に「ガーガー」などと音を出すのです。
健康な人であれば、音が出るほど気道は狭くなりませんが、気道を狭くするさまざまな要因によっていびきを引き起こします。いびきの原因を知り、自分の状態を把握して対処することが大切です。
● いびきをかきやすい人の特徴
いびきを引き起こす要因にはどのようなものがあるのでしょうか。以下のいびきをかきやすい人の特徴から見ていきましょう。
①肥満体型の人
のどのまわりに脂肪がつくと、眠っている間に気道を圧迫してしまいます。そのような状態だと、呼吸がしづらく、いびきをかきやすくなります。
②口呼吸の人
寝ているときに口呼吸になっている人も、口のまわりの筋肉が低下する原因のひとつであるといわれています。
口呼吸によって下がった舌根が、気道を圧迫して空気の通り道を狭くしてしまいます。朝起きて口が乾いていたり、気がつくと口が開いている人は、寝ているときにいびきをかいているかもしれません。
③あごが小さい人
骨格の問題にはなりますが、あごが小さい人も舌根が落ち込みやすく、気道スペースが狭くなりやすいため、いびきをかきやすい傾向にあるといわれています。
④花粉症やアレルギー性鼻炎の人
花粉症やアレルギー性鼻炎の人は、鼻がつまっていることが多く、口呼吸になりやすい状態。先に述べたように、口呼吸になることでいびきをかきやすくなっています。
⑤風邪や疲れている人
風邪や疲れている人が寝ているとき「今日はやたらいびきが大きいな」と思うことがあるかもしれません。風邪で鼻が詰まっていたり、重労働や激しい運動をして強い疲労があった場合も口呼吸をしやすい状態になっています。その結果、いびきをかきやすくなります。
ただし、風邪や疲れから回復し、健康な状態に戻れば、いびきも解消されることが多いため、ほとんど心配はありません。
いびきは病気のサインかも!
普段、寝ているときにいびきをかいていてもあまり気にしていないという人も多いのではないでしょうか。しかし、いびきを悪化させると命の危険もあるため、注意が必要です。ここではいびきと病気の関係について解説します。
● 睡眠時無呼吸症候群 / SAS
大きないびきの発生が特徴的である病気として「睡眠時無呼吸症候群」があります。睡眠時無呼吸症候群は、呼吸が止まってしまう病気です。
呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸しはじめますが、眠りだすとまた呼吸が止まってしまいます。これを一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなり、昼間に眠気を感じたりだるさが残ったりします。
さらに、睡眠時無呼吸症候群が引き起こす低酸素による心臓や血管への負担、睡眠不足に伴うストレスは、高血圧をはじめとするさまざまな生活習慣病やメタボリック・シンドロームを引き起こします。
また、1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上出現するような中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心不全や不整脈などの心血管疾患、眠気による事故などを引き起こし、死亡率が非常に高くなるため、速やかに専門の医療機関で検査、治療を受けることが大切です。
参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
● 脳卒中
睡眠中に脳梗塞や脳出血などを発症すると、舌周辺の筋肉がゆるみ舌が落ち込むことにより、いびきをかく場合があります。
普段はいびきをしていないのに、ある日突然大きないびきをしている場合や、いびきをかいていて、家族に起こされてもすぐに起きられない場合には意識がない可能性も。そのような状況ではすぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
● 甲状腺機能低下
甲状腺機能が低下すると甲状腺ホルモンが減り、上気道の筋肉がゆるむ、舌が大きくなるなどの症状が起こります。それらの症状から気道が塞がり、いびきをかきやすくなります。 甲状腺機能の低下は、とくに中高年以上の女性に多いのが特徴です。
いびきを軽減するためには?
いびきを軽減するためにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは
- 舌の筋肉を鍛えるエクササイズ
- 口呼吸から鼻呼吸にする
- 自律神経を整える
の3つをご紹介します。
● 舌の筋肉を鍛えるエクササイズ
いびきを軽減する方法として最初にご紹介するのが、舌の筋肉を鍛えるエクササイズです。特に、のどの奥、舌の根っこあたりにある口蓋筋(こうがいきん)という筋肉を中心に鍛えていきます。具体的な方法は以下です。
- 具体的な方法として、舌を「ベェー」と思いきり前に出す。
- 最大限に出した状態で15秒キープ。
- これを2回繰り返す。
このエクササイズを朝と晩の1日2セット行うだけ。早ければ1週間、遅くても2〜3ヵ月以内にいびきの症状がかなり改善されるといわれています。
● 口呼吸から鼻呼吸にする
寝ているときに口呼吸になっている人も、いびきのおもな要因です。また、口で呼吸すると浅い呼吸になりがちであるため、普段から鼻呼吸を意識しましょう。日頃から口を閉じ、鼻呼吸をするように意識すると、寝ている間も自然に鼻呼吸をできるようになります。
鼻呼吸のメリットはいびきの解消だけではありません。鼻呼吸には、吸い込んだ空気が肺に入る前にいらないものを取り除き、温めて湿気を与え、心拍数を下げるという効果もあります。その結果、酸素が全身に効率的に行きわたるため、疲労物質の乳酸が減少したり、回復力も高まるなどスポーツにもいい影響をもたらします。
● 自律神経を整える
自律神経を整えることも、いびきの低減につながります。
自律神経を整える基本は、規則正しい生活リズム。たとえば、早寝早起きを習慣づけ、朝起きたらカーテンを開けて陽の光を浴びることで体内時計をリセットすることができます。日中は活動的に過ごし、お風呂はシャワーで済ませるだけでなく湯船に浸かるなど、リラックスできる環境を作ることを心がけましょう。
「危険ないびき」を見逃さず対策を!
いびきは睡眠時無呼吸症候群などの病気のサインである可能性も。不眠の原因にもなるいびきは甘く見すぎず、一度対策を考えることも必要です。
いびきの改善には、筋トレを行ったり、自律神経を整えたりするといいでしょう。 ただし、いびき対策を行っても改善しない場合には、病院への受診を検討しましょう。