新型コロナウイルスによるマスク生活が今なお続き、息苦しさから呼吸が浅くなっていることを実感する方も多いのではないのでしょうか。深い呼吸ができているか知る上で大切な指標が「肺活量」です。
肺活量は、年齢とともに自然と衰えてくるといわれています。そこで、この記事では肺活量を鍛えるための器具のご紹介を中心に、肺活量を鍛えるメリットや注意点なども解説します。
普段、呼吸が浅くなっていると感じる人や、スポーツなどのパフォーマンスを上げるために肺活量トレーニングを実践してみたいと考えている人はぜひ参考にしてみてくださいね。
肺活量について知ろう
そもそも肺活量とは何でしょうか。ここで肺活量についての基本的な知識をおさえておきましょう。
● 肺活量とは
肺活量とは、空気を最大限に吸い込んだあと、それをすべて吐き出したときに肺の中を出入りする空気の量のことです。そのため、肺活量は肺が正常に機能しているかどうか判断するための大切な指標でもあります。
この肺活量を測定できる検査が、肺機能検査です。肺機能検査は、スパイロメーターという測定器を用いて、肺の中に空気をどのくらいたくさん吸ったり吐いたりできるかを調べます。この肺機能検査では、「肺年齢」や呼吸器の病気の有無などが分かります。
下記の記事では、肺機能検査の内容や、肺活量、肺年齢という言葉についてもくわしく解説していますので、合わせてご覧ください。
●肺活量の平均値
肺活量の基準値は、成人の男性で3,000〜4,000ml、成人の女性で2,000〜3,000mlほどであるといわれています。年齢、性別、身長などの体格差によって、肺活量の基準値は異なります。また、国際大会で活躍する水泳選手や男性のトップアスリートの肺活量は6,000〜8,500ml以上にも達するといわれています。
肺活量の平均値について、以下の記事でもくわしく解説していますので、合わせてご覧ください。
アスリートの肺活量の平均値とは?肺活量の基礎知識や肺活量を増やす方法を紹介
● 肺活量は自然に低下する
一般的に、何も対策を打たなければ、肺活量は20歳代をピークに年齢とともに自然と低下するといわれています。これは、老化とともに全身の筋力が低下し、呼吸機能を支える横隔膜や肋間筋などの呼吸筋も衰えるためです。
また長期間にわたる喫煙も、呼吸機能の低下を早める要因となります。これは、喫煙により、気道や気管支などの空気の通り道が狭くなり、空気が通りにくい状態に陥るためです。
心肺機能が低下すると「疲れやすい」「辛い」「長く歩けない」などの理由から不活動な生活につながります。不活動な生活が続くと、さらなる肺活量の低下や心肺機能の低下が見られるという悪循環に陥る可能性があるのです。
● 肺活量は鍛えられるの?
結論からいうと、トレーニングによって肺活量を増大させることは可能です。
適度な運動を行うことで、呼吸に関わる筋肉が鍛えられ、呼吸機能の維持や向上に効果があります。また呼吸筋のストレッチにより呼吸筋の柔軟性を高めることも効果があるようです。
肺活量を鍛えるメリット
肺活量を鍛えることは、私たちの身体にどのように影響があるのでしょうか。ここでは3つのメリットをそれぞれ解説します。
● 持久力がつく
肺活量を鍛えることで得られるメリットの1つ目が、持久力のアップです。
持久力とは、身体を長時間にわたり動かし続けられる力のことで、「スタミナがある」といわれる状態です。
私たちの身体は、呼吸を行うことで酸素を取り込み、運動に必要なエネルギーを作り出しています。肺活量を高め、より多くの酸素を身体に取り込むことができるようになるほど、運動強度の高いスポーツを長時間行うことができます。
● 痩せやすく太りにくい身体へ
痩せやすく太りにくい身体とは、基礎代謝量が高い身体のことです。
基礎代謝とは、人間の身体のさまざまな機能を維持するために、座っている間や寝ている間にも常に消費されているカロリーのこと。肺活量を鍛えて筋肉量が増えると、基礎代謝の向上が期待できます。
また肺活量を鍛えて持久力がつくと、ダイエット効果の高い有酸素運動をある程度の時間継続して行うことができます。
● 集中力がアップする
肺活量を鍛え、肺をしっかり膨らませた深い呼吸ができるようになると、集中力がアップします。
肺活量を鍛えると呼吸筋である横隔膜が活発に働きます。この横隔膜には、自律神経が集中しているため、肺活量を鍛えると自律神経を刺激し、リラックスしている状態に。このリラックスにより、集中力を回復させることができます。
● 免疫力がアップする
免疫力とは身体をウイルスや細菌から守り、健康な状態を保つ防衛機能のこと。感染症から身体を守る、風邪をひきにくい身体を作るためには、この免疫力アップが欠かせません。
肺活量が増えると、身体に取り込める酸素の量が増えるため、身体が温まって血流が促進されます。そして、血液に含まれる免疫細胞が活性化されることで、免疫力アップにつながるといわれています。
● 精神的に安定する
肺活量がアップし、深い呼吸ができるようになると、精神的にも安定するといわれています。
深い呼吸では横隔膜が大きく動くため、横隔膜に集中している自律神経が刺激され副交感神経が優位になります。副交感神経は精神的な安定やリラックス効果を発揮するはたらきがあります。
こちらの記事では自律神経と呼吸の関係についてくわしく触れていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
呼吸方法を変えて自律神経バランスを整えよう!【医師が詳しく解説!】
肺活量を鍛えるためにおすすめの器具を使ったトレーニング
肺活量を鍛えるためにはさまざまな方法があります。ここでは、そのなかでも器具を使ったトレーニングについてお伝えします。
● ペットボトル
身近なものを使って肺活量を鍛えられる方法として、ペットボトルを使ったトレーニングがよく知られています。ペットボトルの本体を口にくわえたまま、息を吸ったり吐いたりすることで、ペットボトルの形が潰れたり元に戻ったりすることを利用してトレーニングを行っていきます。
ペットボトルを使用するメリットとしては誰でも身近にあるものを使用するため、低コストでチャレンジがしやすい点です。
ペットボトルを使ったトレーニングのくわしい方法はこちらの記事でも解説していますので、合わせて参考にしてみてくださいね。
● 低酸素トレーニング用マスク
肺活量を高めるための器具として、低酸素トレーニング用マスクがあります。「低酸素トレーニング」や「高地トレーニング」という言葉を一度は耳にしたことがある方もいるかもしれません。低酸素トレーニングとは、標高が高く空気の薄い環境で行うトレーニングのことです。
空気の薄い環境でトレーニングをすると、身体がより多くの酸素を取り込もうとします。その結果、持久力の強化につながったり、短時間でトレーニング効果を得られたりするとして、ランナーを中心に人気が高まっています。
低酸素トレーニング用マスクは、酸素量を制限することにより、低酸素状態を作り出します。わざわざ高地に行かなくても手軽に低酸素状態を作り出すことができ、その場で高地トレーニングを行ったときのような効果を得られることが期待されます。
● 肺活量トレーニング 3ボール式 スパイロメーター
「3ボール式スパイロメーター」は、呼吸筋・肺機能のトレーニングにも活用でき、肺活量を簡単に計測できる肺活量計です。
ホースから息を吸い込むことで、管に入っている3つのボールが、600、900、1200ccの吸気を示します。ボールが動くのが目視で分かるため、楽しくエクササイズすることができます。
● 呼吸筋トレーニングデバイス「エアロフィット」
次に、肺活量を高める器具・グッズとしてご紹介するのが、呼吸筋トレーニングデバイス「エアロフィット」です。
エアロフィットは横隔膜をはじめとする呼吸筋に抵抗を与えることで、肺機能を高めることができます。6段階の抵抗ホイールが備わっており、個人に応じて負荷が調整できることも便利なポイント。
エアロフィットを使ったトレーニングは1日5~10分程度で、ご自宅でテレビを見ながらなど、好きなときに好きな場所で行うことができます。また、本体は50g以下と非常に軽量なので、旅行先や出張先にも気軽に持ち運ぶことができます。
エアロフィット専用のアプリも開発されており、デバイスをBluetooth接続することでトレーニング結果をアプリで記録することができます。肺活量、呼気、吸気をそれぞれ数値化することができるので、日々のトレーニングの成果が一目で分かり、より効率的に肺活量を鍛えることができるのです。
また、その日の体調や気分に合わせたトレーニングメニューを提案してくれるので、楽しみながら呼吸筋のトレーニングを習慣化したい方におすすめです。
肺活量を鍛えるためにおすすめの器具なしトレーニング
次に、特に器具を使わなくても行える、肺活量を鍛えるためのトレーニングをご紹介します。
● ランニング
器具を使わずにできる肺活量を鍛えるためのトレーニングとして、ランニングがあります。
ランニングは比較的長時間にわたってエネルギーを使うため、多くの酸素が必要になります。体内に多くの酸素を取り込もうと呼吸筋が活発に働くため、肺活量の向上が期待できます。
またランニングは有酸素運動であるため、基礎代謝アップや体脂肪燃焼にもつながります。
下記の記事では、ランニング時におすすめの呼吸法についても触れていますので、「ランニングを取り入れたい」と考えている方はぜひ参考にしてみてください。
これでマラソンが楽に走れる!!おすすめのマラソン用呼吸法とは?
● 水泳
肺活量を鍛えるためのトレーニングとして、水泳もオススメです。
水泳は息継ぎによって、一度に多くの酸素を取り込もうとするため、呼吸筋が鍛えられます。水泳には心肺機能の向上だけでなく、全身の筋力の向上などのメリットもあります。
肺活量を鍛えるトレーニングは、今回ご紹介したほかにもさまざまな方法があります。下記の記事でも効果的なトレーニングをご紹介していますので、ぜひチェックしてくださいね。
【肺活量を増やす方法!】メリットや効果的なトレーニングとは?
● 腹式呼吸
肺活量を鍛えるためには、胸だけで呼吸をするのではなく、お腹も使った腹式呼吸も効果的です。腹式呼吸を行うことで横隔膜がしっかりはたらき、より多くの酸素を身体に取り入れることができます。
腹式呼吸のコツや具体的なやり方は以下の記事でくわしくご紹介していますので、記事を参考にしながら実践してみてくださいね。
【呼吸で心と身体は整えられる!】腹式呼吸のコツとそのメリットとは?
● 呼吸筋のストレッチ
呼吸筋はトレーニングで緊張感を与えるだけでなく、ゆるめることも大切。そこで取り入れたいのが、呼吸筋のストレッチです。トレーニングの前後にストレッチで呼吸筋をほぐすことで柔軟性が高まり、トレーニングの効果をより感じられるようになるでしょう。
呼吸筋のストレッチの方法はこちらの記事で具体的に紹介していますので、ぜひごチェックしてみてください。
呼吸筋を鍛えるためのストレッチとは、どのようなもの? そしてその効果とは?
肺活量を鍛える際のポイント
肺活量を鍛えるとき際に気をつけるべきポイント2点をお伝えします。
● ハードなトレーニングを無理に行わない
肺活量を鍛えるときは、ふだんのトレーニングと違って、強く空気を吸ったり吐いたりすることが多いため、酸欠状態になりやすいものです。そのため、ハードなトレーニングを長時間行なわないなど、決して無理はしないようにしましょう。
トレーニングは1回あたりが短い時間であっても、正しい方法で日々継続していけば、徐々にトレーニング時間を延ばせるようになるなど結果が目に見えて出てくるでしょう。すぐに結果が出なくても焦らず、続けることが大切です。
● 食事直後は控えて
食事直後の満腹の状態でトレーニングを行うと、脇腹の痛みや消化不良を引き起こす可能性があるため、食事直後のトレーニングは控えるようにしましょう。
また極度の空腹状態でも、体内のエネルギーが不足し、トレーニングの効果が薄くなるため、トレーニングを行うタイミングとしてはおすすめできません。
そのため、食べ物の消化が完了し、体内のエネルギーがまだ残っている食後2〜3時間ほどが、トレーニングを行うベストなタイミングといわれています。
● 器具・グッズは清潔に保つ
肺活量のトレーニングに使用する器具・グッズは唾液なども付着するため、清潔に保つことを心がけましょう。継続して使うものは、水洗いOKなもの、洗いやすいシンプルな構造のものがおすすめです。
●正しい姿勢を意識する
肺活量を高めるトレーニングでは正しい姿勢を意識することが大切です。背中が丸まっていたり、前のめりの姿勢になると、胸郭という肺を取り囲む空間が狭くなり、深い呼吸がしにくくなります。トレーニングのときだけでなく、日ごろから姿勢を伸ばす習慣を身につけましょう。
ライフスタイルに合わせて、肺活量を鍛える方法を選ぼう
普段の生活で肺活量を意識する機会はなかなかないかもしれません。しかし人間は1日に2万回程度の呼吸を行なっているといわれ、この呼吸機能の状態を知るために肺活量は重要です。
また肺活量を鍛えることで、持久力がつくだけでなく、基礎代謝量のアップ、集中力のアップなど、身体にとってうれしい効果が期待できます。
本記事を参考に、ぜひ肺活量トレーニングを生活に取り入れて、日常生活やスポーツなどの活動に役立ててみてください。