一般的に、国際大会などで活躍する競泳選手などトップアスリートの肺活量は高いといわれ、肺活量と運動にはどのような関係があるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、肺活量と運動の関係のほか、運動以外でも呼吸機能の維持、向上に役立つ方法をお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
呼吸機能をみる指標!肺活量と肺年齢
そもそも肺活量とは何でしょうか。最近よく耳にするようになった「肺年齢」という言葉についても解説します。
● 肺活量とその平均値
肺活量とは、安静状態で思い切り息を吸って、力いっぱい吐き出したときの空気の量を指します。つまり、肺活量は意識的に肺が出し入れすることのできる空気の量であるため、肺活量を測ることで、肺が正常に機能しているかどうか知ることができます。
肺活量の平均値は、成人の男性で3,000〜4,000ml、成人の女性で2,000〜3,000mlといわれていますが、年齢、性別、身長などの条件よって基準値は異なります。また、競泳選手や男性のトップアスリートの肺活量は6,000〜8,000ml以上にも達するといわれています。
肺活量の平均値については、こちらの記事でくわしくご紹介していますので、気になる方はぜひチェックしてくださいね。
アスリートの肺活量の平均値とは?肺活量の基礎知識や肺活量を増やす方法を紹介
● 呼吸機能の健康状態を知るなら「肺年齢」もチェック
肺年齢とは、年齢という身近な指標を用いることで、自分の肺の健康状態を知るための目安です。実年齢よりも肺年齢が高ければ高いほど呼吸機能が衰えていることを意味し、低ければ低いほど呼吸機能は健康ということになります。
日本呼吸器学会によると、肺年齢が実年齢より19歳以上高いと肺機能障害がある場合が多いとされています。肺年齢を知ることで、肺の健康意識を高め、健康維持や禁煙指導、疾患の早期発見などに活用できます。
肺活量と運動の関係
それでは、肺活量と運動にはどのような関係があるのでしょうか。
● 運動習慣により、肺活量の増加が期待できる
運動習慣がない人に比べて、運動習慣がある人は肺活量が多い傾向にあります。これは、運動によって、肺の動きを支える筋肉である呼吸筋が鍛えられて呼吸機能が向上し、肺活量も増大している可能性があるためです。
人間が呼吸をする際、息を吸うときには横隔膜が下がって肺が膨らみ空気が入ります。息を吐くときは筋肉を緩めるだけで空気が外に出ていくため、いずれの筋肉もはたらいていませんが、意識して息を吐く場合には腹横筋や内肋間筋などが活躍します。
このようなメカニズムから、運動によって呼吸筋を鍛えれば、呼吸機能の維持、向上に効果があり、肺活量も増大し、肺年齢も若返ることが期待できます。
肺活量が多い人の特徴やメリットについては、下記の記事で触れていますので合わせてご覧ください。
肺活量が多い人と少ない人の特徴は?メリットやデメリット、自宅でできるトレーニングも解説!
● 肺活量を高めるなら有酸素運動がおすすめ
運動のなかでも、肺活量を高めたいと考えたときに特におすすめなのが、有酸素運動です。
有酸素運動とは、ジョギングやウォーキング、サイクリングなど筋肉への負荷が比較的軽く、継続して行う運動のことです。体内の糖や脂肪が酸素と一緒に使われることで、筋肉を動かすためのエネルギー源とします。その一方で、短距離走や筋トレのように短時間で強い力を発揮する、運動強度の高い運動は無酸素性運動と呼ばれます。
長時間運動を続けるためには、肺で十分な量の酸素を体の中に取り込みながら、心臓で全身に循環させる必要があります。そのため、ある程度の時間を必要とする有酸素運動を継続することで、心肺機能の向上が期待できます。
下記の記事では有酸素運動の中でもランニングにおける呼吸法を解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
ランニングのための呼吸法をマスターしよう。走るのが楽しくなる呼吸法はこれ
● 肺活量を高める運動①中・長距離走
有酸素運動の代表格としておすすめなのが、マラソンなどの中・長距離走です。中・長距離走は肺活量の増大だけでなく、体力の向上や体質改善にもつながります。
エネルギーを多く使う中・長距離走では多くの酸素が必要になります。中・長距離走を行うことで活発に呼吸筋が働き、なおかつ長時間働くため、呼吸機能を向上させる可能性があります。
マラソンにおけるおすすめの呼吸法はこちらの記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。
これでマラソンが楽に走れる!!おすすめのマラソン用呼吸法とは?
● 肺活量を高める運動②水泳
水泳もまた有酸素運動であり、肺活量を高める運動としておすすめです。なかでも水泳は、大きく息を吸う時間や水中で呼吸を止めている時間が長いという特徴があり、心肺機能の向上が期待できます。
さらに水中では、水の抵抗により身体に負荷がかかるため、全身の筋力向上や、陸地での運動よりも消費カロリーが大きくなります。
運動以外でも肺活量は維持、向上できる!
運動以外の方法でも肺活量は維持、向上できるといわれています。そこで今回は、肺活量を向上するために4つの方法をご紹介します。
① 正しい姿勢をキープして心肺機能をアップ
呼吸と姿勢は密接に関わっており、正しい姿勢をキープすることで心肺機能がアップします。猫背や前かがみの姿勢は肺を圧迫し、横隔膜の動も悪くなってしまいます。その結果、呼吸筋が衰えてしまう可能性があります。
正しい姿勢を維持できると、体内へ取り込む酸素量は大きく変わり、肺活量の維持、向上が期待できます。
② 肺の機能を高める口すぼめ呼吸
口すぼめ呼吸は、リハビリテーションにも活用されている呼吸法で、たくさんの空気を肺の中に取り込むことができます。
口を閉じて鼻から息を吸い、口をすぼめて、2倍の時間をかけてゆっくりと息を吐き出しましょう。口をすぼめて息を吐くと、気道の内側に圧力がかかり、細くなった気管支が広げられ、肺にたまった空気を外に出しやすくなります。
③ 呼吸筋のマッサージ
呼吸筋は鍛えるだけでなく、緩めることも大切です。そこで取り入れたいのが、呼吸筋マッサージです。まずはマッサージやストレッチで筋肉をほぐし、呼吸をしたときに目いっぱい、肺を膨らませられるようにすることが大切です。
呼吸筋のマッサージの方法は、こちらの記事で具体的にご紹介していますので、ぜひごチェックしてみてください。
呼吸筋を鍛えるためのトレーニング方法はどのようなものか? 呼吸筋を鍛えるために、何か器具は必要?
④ 喫煙は肺にとって大敵
肺活量を増大するために、何かをはじめることも大切ですが「やめること」も重要です。その最たるものが喫煙習慣です。
喫煙習慣がある人は肺活量が少ない傾向にあるだけでなく、長年の喫煙により、呼吸疾患のリスクが高まっています。症状が進むと運動ができなくなったり、酸素吸入を続けないと生活できなくなったりする可能性も。喫煙をされている方は、まずは自分の肺年齢を認識し、禁煙することがスタートです。
肺活量と運動には、好循環が生まれる!
運動習慣により、呼吸筋が鍛えられ肺活量の増加が期待できます。また、肺活量が増加すると全身に酸素が効率よく送られるため、運動を長く続けられ持久力も向上します。このように運動と肺活量の間に好循環が生まれます。
今回は運動以外にも、姿勢や呼吸法、マッサージなどもご紹介していますので、ご自身のライフスタイルに合わせて上手に取り入れてみてください。