呼吸筋の中でも特に大事な役割を持つのが肋間筋(ろっかんきん)です。呼吸をつかさどるからだの器官はもちろん肺ですが、実は肺自体が大きくなったり小さくなったりして動くわけではありません。
肋間筋をはじめとする肺の周りの筋肉が動くことで肺の周辺の気圧が変化し、その結果肺から空気が出たり入ったりしているのです。
そのため、肋間筋の役割は呼吸筋の中でも特に重要な役割があると言えます。そこで今回は、その肋間筋の位置や役割、そして鍛え方まで解説します。
肋間筋はどこにある?
肋間筋は呼吸に深く関係する筋肉ですが、一体体のどこに存在し、どのような役割を担っているのでしょうか。ここでは肋間筋の位置と役割をご紹介します。
① 肋間筋は肋骨の間にある筋肉
肋間筋があるのは、人間の肋骨部分、より正確に言うと肋骨の骨の間に存在しています。ちょうど弓のような形をしており、胸椎から胸骨にかけて、内臓を取り囲むようについている筋肉です。
けして分厚い筋肉ではありませんが、呼吸、特に胸式呼吸において、重要な役割を持つのがこの肋間筋なのです。
② 外肋間筋と内肋間筋の違い
肋間筋はとても薄い筋肉であるにも関わらず、3つの層によって構成されています。
外側の肋間筋から順にそれぞれ、「外肋間筋」・「内肋間筋」・「最内肋間筋」と呼ばれており、胸式呼吸で特に重要な働きをするのが「外肋間筋」と「内肋間筋」の2つです。この2つの筋肉がペアで働くことで、肺に空気をとりいれたり、肺から空気を出すことができるのです。
③ 肺を動かす役割を担う肋間筋
「外肋間筋」と「内肋間筋」が互いに補い合いながら動くことで、人間は胸式呼吸をすることができます。息を吸う時、「外肋間筋」が収縮し肋骨が引き上げられます。
すると同時に横膈膜があがり、胸郭(肺が入っている胸の部分の空洞部分)が大きく広がり胸郭の中の気圧が低下します。気圧は高い方から低い方へ流れる修正があるので、胸郭内の気圧が低下すると、口や鼻を通じて高い気圧の外気が肺の中に入ってくることになります。
一方、息を吐くときには、「内肋間筋」が働くことで肋骨の位置が下がり、胸郭が小さくなります。そのため胸郭内の気圧が上がり、外に向かって呼吸を吐き出すという行為になるのです。
肋間筋を鍛えると、どんな良いことがあるの?
人間の呼吸にとって、肋間筋が重要な役割を持っていることはご理解いただけたかと思います。
では、肋骨にある薄い筋肉層の肋間筋を鍛えることで、体にはどのような効果が現れるのでしょうか。次の3つの効果を検証してみましょう。
① 深い呼吸ができるようになり、体内に取り入れることができる酸素の量が増える
肋間筋を鍛えることで、肋骨が大きく動けるようになります。肋骨の可動域が広がるとその分肺も大きく動けるようになり、肺に入る空気も増えますし、肺から出る空気も増えることになります。いわゆる「呼吸が深くなった状態」となり、その結果体の中に取り入れることのできる酸素の量も多くなります。
より多くの酸素が体の中に取り入れるようになると、持久力がつくので疲れにくくなりますし、体の隅々にまで酸素がいきわたり、冷え性などが解消する場合もあります。また、勉強や仕事においても集中力が向上したりする、気分の転換がしやすくなるなどの効果が現れることがあります。
② 体幹が安定する
すでに見たように、肋間筋は肋骨部分にある筋肉群です。この筋肉を鍛えることで上半身が安定し、体幹が良くなる可能性があります。体幹を鍛えることを考えると、どうしても腹筋を中心に鍛えることを考えがちです。
しかし、薄いとは言え肋間筋も上半身にある筋肉です。そのため肋間筋を鍛えると、腹筋だけを鍛えるときよりも効率的に体幹を鍛えることができます。体幹を鍛えるなら、肋間筋も一緒に鍛えることがおすすめです。
③ スタイルが良くなったように見える
肋間筋を鍛えることで体幹が安定すると、見た目ではっきりわかるほど、姿勢が良くなります。
姿勢が悪くなると、どうしても血行が滞りがちになり、必要のないところにまで脂肪がついてしまいやすくなります。しかし、肋間筋を鍛えて姿勢が安定し、同時に酸素が体中に行き渡るようになると、体中の血行が良くなり、むくみが取れたり脂肪が減るなどの効果が現れます。その結果、見た目ではっきりわかるほどスタイルが良くなるのです。
ただし、この場合の「スタイルが良くなる」ということは必ずしも「体重が減る」ことを意味するものではありません。人間の体内の脂肪と筋肉を比べると、同じかさであれば、筋肉のほうが重いもの。肋間筋を鍛えても体重が急激に減ることはないでしょうが、筋肉がつくので見た目がスッキリします。体重と見た目は必ずしも比例するものであるというわけではないので、注意が必要です。
肋間筋の鍛え方とは
肋間筋も筋肉です。加齢や病気などでその筋力が落ちてしまうこともあります。しかし、筋肉である以上鍛えることも可能です。この章では肋間筋の鍛え方をご紹介いたします。
① まずはストレッチから
筋肉を鍛える、と言ってもいきなり運動をしてしまうと、怪我をすることになります。そしてそれは肋間筋も同じこと。以外と肋間筋は怪我をしやすい筋肉で、ゴルフのスイングのやりすぎなどで、肋間筋を炒めて苦しむ人も少なくないのです。呼吸をつかさどる肋間筋は基本的に休養させることができません。
肋間筋の怪我を防ぐため、筋トレ前には肋間筋のストレッチを習慣にしたほうが良いでしょう。肋間筋のためのストレッチに特別なポーズはありません。
こちらの記事で紹介されているようなよく知られているポーズをとり、すこしゆっくり目に呼吸をしながらストレッチしてみましょう。
呼吸筋を鍛えるためのストレッチとは、どのようなもの? そしてその効果とは?
② マッサージも有効
ストレッチと同様、肋間筋をマッサージすることも有効です。なにしろ肋間筋は24時間働き続ける筋肉。すこしこの筋肉をいたわってあげるためにも、時々は肋骨の辺りをマッサージしてみましょう。
より丁寧に肋間筋をマッサージしたい方はこちらの記事を参考にしながらマッサージしすることをおすすめします。また、お風呂に入ったり肋骨のあたりを意識して温めることでも、血行が良くなるので、マッサージと同じような効果があります。ぜひお試しください。
③ 肋間筋も筋トレできる
もちろん、肋間筋を筋トレして鍛えることもできます。具体的な方法を詳しく知りたい方はこちらの記事のようなトレーニングをしてみると良いでしょう。基本的には深くてゆっくりとした呼吸を繰り返すことが有効です。
ちなみに肋間筋のある胸郭はストレスがあるとどうしても狭くなりがちなので、肋間筋の筋トレをするときには、リラックスできる空間で行うことをおすすめします。
呼吸筋を筋トレ方法とはどのようなもの? 呼吸筋を鍛えると腹圧は上がる?
④「エアロフィット」のような専用の器具も利用
肋間筋を鍛える一つの方法として、「エアロフィット」のような専門の器具を使うことも有効です。
こうした専門の器具では、肋間筋だけではなく、呼吸に関わる筋肉を全て鍛えることができるのが大きな利点と言えるでしょう。
肋間筋を鍛えて、心身ともに快適な日常生活を
肺を動かす役割をもつ肋間筋は、同時に体を安定させるための体幹の筋肉の一つでもあるのです。
そのため肋間筋を鍛えることにより、より深い呼吸をすることが可能になるだけでなく、体幹も鍛えることになるのでスタイルが良くなったように見えるという嬉しい効果も現れます。
肋間筋を鍛えるための筋トレやストレッチはけして難しいものではありません。気楽に取り入れると、日常生活を快適に過ごすことができるようになるでしょう。