人間が生きてる限り使うことになる筋肉の一つが、呼吸をつかさどる呼吸筋です。一日に人は2万回ほど呼吸をするといわれますが、起きている時はもちろん寝ているときも、呼吸筋は動き続けているのです。
そんな働き者の呼吸筋ですが、思わぬきっかけで筋疲労を起こしてしまうことがあります。この記事では呼吸筋の疲労の原因と回復方法をご紹介いたします。
呼吸筋も疲労する?
呼吸筋があるのは胸部や腹部を中心にした上半身です。とはいえ実際には上半身全体の筋肉が、何らかの形で呼吸に関係した筋肉となっています。
これらの呼吸筋も筋肉である以上、疲労することもあります。この章では呼吸筋が疲労するという状態について検証します。
①筋肉が疲労する、とはどのような状態なのか。
呼吸筋に限らず、筋肉が疲労すると、筋肉痛などの症状が現れます。一般的には筋肉が引き伸ばされて大きな力を出す動きを繰り返した結果、筋肉中に乳酸が蓄積されてしまったり筋肉が炎症を起こした状態を、筋肉が疲労した状態ということができます。
例えば思い切り声を出して笑いすぎた翌日などに腹筋のあたりが筋肉痛で痛くなることがありますね。そんな時は呼吸筋が疲労している状態と言うことができます。
②呼吸筋の疲労とは、体のどの筋肉の疲労なのか。
呼吸筋があるのは主に上半身。特に胸部と腹部に呼吸筋があります。また胸から首にかけてに加えて方のあたりにも呼吸筋があります。胸部には肋骨あたりに内肋間筋と外肋間筋、その2つの筋肉の下に横隔膜という筋肉があります。
腹部には外腹斜筋と内腹斜筋、そして腹直筋があり、主に息を吐くときにこれら腹部の筋肉が使われます。胸から首そして肩にかけては斜角筋や暴走金があり、こちらは息を吸うときに動く筋肉です。
このような場所にある筋肉が痛くなったり、筋肉痛になったりしたら、呼吸筋が疲労したものと考えても良いでしょう。
③どんなときに、呼吸筋は疲労するのか。
呼吸筋も筋肉である以上、疲労することもあります。呼吸筋が疲労するのは主に肺炎や慢性気管支炎・インフルエンザなど強烈な咳をともなう病気をしたとき、そしてストレスなどで呼吸筋の動きが鈍くなったときなどです。
また、例えば胸や背中を強く打ったときなどに一瞬呼吸が止まることがあります。のように呼吸筋のある場所が外部から何らかの衝撃を受けて怪我をしたときなどにも、呼吸筋は炎症を起こし、疲労することがあります。
呼吸筋が疲労したら、体にどんな変化が起こるのか
呼吸筋が疲労すると、どのような症状が体に現れることになるのでしょうか。
①呼吸がしにくくなる。呼吸が荒くなる。
まず、最初の症状として、呼吸筋が疲労すると、意識せずに呼吸をすることが難しくなります。つまり、呼吸をするときに自分で意識して深く息を吸ったり吐いたりすることで、やっと呼吸ができている状態になります。
深く呼吸をするようになると、主に腹部にある呼吸筋が積極的に働くようになりますが、意識せずに自然に呼吸しているときなどは胸部の呼吸筋が主に動きます。つまり、意識して深い呼吸をしているときには、腹部の呼吸筋を中心に使っているため、その部分の呼吸筋が一層疲労しやすくなるのです。
②体中に酸素が行き渡らなくなる。
呼吸筋が疲労し、呼吸が荒くなると、体の中に必要な酸素が行き渡るのが難しくなります。
体の中の酸素の量が減ると、まず、持久力がなくなり、長い間歩いたり動き続けることがしんどく感じるようになってきます。いわゆる「スタミナ(あるいは体力)がない」という状態になり、頻繁に休憩をとらないと動くことが難しくなります。
また、体の中の酸素量が減ると血液の流れが悪くなります。そのため、冷え性や肩こりに悩むことも多くなりますし、顔色も悪くなる人も多いです。
③脳が酸欠になる。
体の中の酸素の量が減ると、当然脳に行き渡る酸素の量も減ることになります。実は体の中で最も多くの酸素を消費する器官が、脳なのです。そのため酸欠は人間の脳の働きにも影響を与えます。
集中力がなくなり、注意力が散漫になりますし、記憶力が減退する場合もあります。また、脳が酸欠になると脳内の血管が膨張します。するとその膨張した血管の近辺にある神経が刺激されることになり、目がチカチカしたり激しい頭痛に苦しむ人がいたりします(これが酸欠で頭が痛くなる原因です)。
このように呼吸筋の疲労により体や脳に様々な悪影響が出てしまう可能性があるのです。
呼吸筋の疲労を解消するための方法とは
では、呼吸筋が疲労した場合には、どのように処置をすることが正しいのでしょうか。本来であれば筋肉疲労ある場合には休息をとり、場合によっては治療などをした後にリハビリなどをする回復過程に入ることが必要となります。
しかし、24時間働き続ける呼吸筋を動かさずに休息させるということは、人間の体にとって「死」を意味する行為になってしまいます。そのため、呼吸筋の疲労回復には、「呼吸筋を動かしながら回復させる」という手法が必要になってきます。
具体的な呼吸筋の疲労回復方法は、主に次の3種類があります。
①呼吸筋マッサージ
まず、日々休むことなく動き続けている呼吸筋をマッサージすることから始めてみましょう。胸部であれば肋骨のあたりを手のひらで大きく輪を描くようになでたあと、肋骨の隙間に指を軽く入れてマッサージします。
その後肋骨の一番下の骨の下に指を入れて、横隔膜のある辺りをマッサージします。このとき、呼吸をゆっくりしながら行うようにしましょう。腹部はお腹を上から下まで手のひらでさすった後に腰の上部あたりもさすると、良いマッサージになります。また、お風呂などに入り、腹部や胸部を温めることもおすすめです。
②呼吸筋ストレッチ(過去の呼吸筋ストレッチの記事をここで提示予定)
呼吸筋のストレッチ方法ですが、この記事でとりあげたポーズをすると、気持ちよくストレッチされて、筋肉の中の血行が良くなり、疲労が取り除きやすくなります。ストレッチをするときも、呼吸は焦らずゆっくりと息を吸ったり吐いたりしましょう。
③呼吸筋の筋トレ
呼吸筋をマッサージしてからストレッチまですると、筋肉中の血行が良くなり疲労物質が取り除かれ、新鮮な酸素や栄養が供給されるようになります。そうすると、呼吸筋も疲労から回復してきます。
呼吸筋が疲労から回復し始めたら、リハビリの一環として呼吸筋の筋トレも行うことで、呼吸筋が強化され、疲れにくくななります。呼吸筋の筋トレはいくつか方法があり、横になって腹部を積極的に凹ませたり膨らませたりを繰り返す方法などもあります。また、呼吸筋を鍛えるための専用の器具を使うことも、有効な呼吸筋の強化方法になります。
呼吸筋における具体的なトレーニング方法はこちら記事で紹介しているので、参考にしてみてください。
- 呼吸筋を鍛えるためのトレーニング方法はどのようなものか? 呼吸筋を鍛えるために、何か器具は必要?
- 呼吸筋を鍛えると日常生活はこう変わる。効果はここでわかる!
- 呼吸筋を筋トレ方法とはどのようなもの? 呼吸筋を鍛えると腹圧は上がる?
呼吸筋の疲労を取り除くことも大切
病気やストレスなどの原因により、呼吸筋も疲労することがあります。呼吸筋が疲労して動かなくなると、酸素が体や脳に行き渡らなくなり、様々な悪影響が現れます。呼吸筋は疲労しても完全に休ませることはできない筋肉なので、疲労を取り除きながら少しずつ動かすことが必要になります。
呼吸は上半身全体を使う行為でもあるので、特定の呼吸筋が疲労を起こした場合は、他の筋肉を使って上手に呼吸ができるようにする必要があるでしょう。