インナーマッスルはアウターマッスルにくらべ、筋肉痛になりにくいといわれています。しかし、筋肉痛にならないと「トレーニングの仕方が間違っているんじゃないか」と思う方もいるかもしれません。
そこで、今回はインナーマッスルが筋肉痛になりにくい理由や、筋肉痛の予防策、対処法などをご紹介します。トレーニングをしていて筋肉痛に悩んでいる方や筋肉痛にならなくて不安に思っている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
そもそも「インナーマッスルとは何?」と思った方はこちらの記事を先にお読みいただくことをおすすめします。
インナーマッスルってどこの筋肉のこと?体幹との違いやそのはたらきを解説
筋肉の種類
筋肉には大きく分けて、インナーマッスルとアウターマッスルの二種類があります。それぞれの特徴や役割の違いについて見ていきましょう。
● インナーマッスルとは
インナーマッスルとは、身体の比較的深い部分にある筋肉の総称です。これらの筋肉は「深層筋」とも呼ばれています。そのため、見た目でインナーマッスルがはたらいていることを確認するのは、なかなか難しいかもしれません。しかし、「正しい姿勢の維持」や、「なめらかな動作のサポート」、「内臓の正しいはたらきを促す」などの人間の基本な動作において、インナーマッスルは重要な役目を果たしているのです。
また、よく混同されやすい言葉として「体幹」という言葉があります。フィットネス関連の雑誌、書籍などでは「コア」とも表現されることもあるでしょう。体幹とは、人の身体のうち頭・腕・脚以外の胴部分を指した言葉なのです。体幹にある筋肉の一部には、インナーマッスルも含まれます。つまり、インナーマッスルは「深さ」を意味し、体幹は胴という「場所」をあらわしています。
インナーマッスルについて下記の記事でくわしく解説していますので、合わせてご覧ください。
インナーマッスルってどこの筋肉のこと?体幹との違いやそのはたらきを解説
● アウターマッスルとは
アウターマッスルは体の表面に位置し、皮膚の上から触ることのできる筋肉を指しています。そのため、インナーマッスルが深層筋と呼ばれるのに対して、アウターマッスルは「表層筋」と呼ばれています。
アウターマッスルは意識的にトレーニングしやすいことも特徴のひとつ。見た目に分かりやすい筋肉であるため、年齢とともに衰えやすいのもアウターマッスルです。
インナーマッスルとアウターマッスルは、お互いに作用してはたらいているため、どちらか一方を鍛えてもバランスが崩れ、怪我につながる可能性も。どちらの筋肉もバランスよく使っていくことが、身体の安定性にもつながるでしょう。
下記の記事では、インナーマッスルとアウターマッスルの違いやそれぞれの鍛え方についてご紹介しているので、参考にしてみてください。
インナーマッスルとアウターマッスルを同時に鍛える?はたらきや特徴の違いとは
筋肉痛にまつわるギモン
ここでは筋肉痛にまつわるさまざまなギモンを深堀りしていきます。
筋肉痛はどうして起こるの?
ふだんは行わない運動をした翌日、全身が筋肉痛に……なんて経験はないでしょうか。ここでは、そもそも筋肉痛はどうして起こるのか、また、筋肉痛が数日後に遅れてやってくる理由なども解説します。
原因①筋線維の損傷
筋肉筋肉痛が起こるメカニズムは、いまだ完全に解明されていません。筋肉痛は、トレーニングなどの運動によって筋線維が損傷することで起こる、というのが、現時点での有力な説とされています。
筋肉はたくさんの筋肉の線維(筋線維)からできており、それらが束ねられて筋肉となります。トレーニングを行うと、この筋線維が部分的に損傷します。その筋線維を修復する際に炎症反応が起こり、痛みを引き起こすことで筋肉痛があらわれると考えられています。
また、筋線維を修復する際には筋線維が以前よりも少し太くなって再生します。これを「超回復」といい、超回復を繰り返し行うことで筋肉はだんだん太くなっていくのです。
原因②脱水による循環不全
筋肉と水分に関係があることは意外に思われるかも知れません。人間の身体含まれる水を「体液」と呼び、体液は体の60%を占めています。
筋肉の中に含まれる体液には
- 筋肉を作る
- 栄養を届ける
- 不要な老廃物を外に出す
などの役割があります。水分を十分に補うことによって、必要な栄養を届けたり、疲労物質を外に排出してくれたりすることが促進されるため、筋線維の修復がされやすくなるといわれています。しかし、運動中に身体の水分が奪われ脱水状態になると、これら体液の役割は発揮されにくくなります。
筋肉痛が遅れてやってくるのはなぜ?
アスリートが思い切り自転車をこぐような、筋肉を「早く、強く」動かす動作は、筋肉に大きな負荷がかかるため損傷しやすく、筋肉痛が比較的早く出てくる傾向にあります。これを「即発性筋痛」と呼びます。
それに対して、ウォーキングなど、筋肉を「ゆっくり、弱く」動かす動作は、筋肉には小さな負荷のため、損傷しにくくなります。比較的遅く、筋肉痛が出てくるため、数時間〜数日後に痛みを感じます。私たちがふだんの生活で経験する筋肉痛のほとんどが、この「遅発性筋痛」です。
インナーマッスルは鍛えても筋肉痛になりにくい?
インナーマッスルも、ほかの筋肉と同じように、前述したようなメカニズムで筋肉痛になりますが、ふだんから筋肉を鍛えている人は、筋肉痛にもなりにくくなります。また、インナーマッスルは日常生活でも使っている筋肉です。「正しい姿勢を保つ」など、ふだんからインナーマッスルを意識して使うことによって自然と鍛えられ、筋肉痛を感じにくい場合もあります。
筋肉痛にならないと効果はない?
結論からいうと、筋肉痛があるかどうかは、筋トレの効果に直接的な関係はないといわれています。
トレーニングの効果を知りたい場合は、体組成計などで筋肉量の増減を知ることが有効な手段でしょう。もしトレーニングをしているのに筋肉量が変化していなかった場合、トレーニング内容を見直すきっかけにもなりますので、なるべく定期的に測りましょう。
筋肉痛にならない原因とは?
筋肉痛にならない原因として、以下のような原因が考えられます。
- 筋トレがうまくできていない
- 筋トレに体が慣れてきた
- トレーニングの負荷がちょうどいい
- もともと運動の習慣がある
筋肉痛にならないことは、筋トレの効果がないとは限りません。ただし、筋トレがうまくできていないことによって筋肉痛が起きにくいこともありますので、正しいフォームでトレーニングを行うことが大切です。
筋肥大と筋肉痛の関係とは?
筋肥大とは、トレーニングを行うことによって分解された筋肉の細胞が、以前より少し太くなって修復され、筋肉の細胞が増加することを指します。筋肥大と筋肉痛は、直接は関係がないといわれています。筋肉痛がなかったとしても、しっかりと筋肉に刺激が届いていれば、筋肥大は可能です。
インナーマッスルが筋肉痛になると身体にどんな症状が出る?
インナーマッスルが筋肉痛になると、腰痛、腹痛、肩の痛みなどの症状が現れます。それぞれの症状についてくわしく解説します。
腰痛
筋肉の使いすぎ、筋肉の損傷による腰痛は筋性腰痛と呼ばれ、スポーツなどで酷使した場所に炎症が起きた状態です。スポーツ以外にも、中腰の姿勢で腰に負担がかかりやすい作業や、デスクワークなどで長時間、同じ姿勢のままで筋肉を酷使すると、筋肉が炎症を起こして痛みが生じます。痛みを緩和するためには、鎮痛剤を服用したり、湿布を貼ったりするとよいでしょう。
腹痛
お腹のインナーマッスルが筋肉痛になると、腹痛や胃痛といった症状があらわれる場合があります。筋トレで筋繊維を傷つけたり緊張させたりすることで、腸のはたらきが低下。腹痛や下痢などを引き起こすこともあります。
肩の痛み
肩の関節周辺には、インナーマッスルが存在します。肩の痛みは筋肉痛によって生じる場合もあれば、逆に、筋力不足などから生じることもあります。
軽度の肩こりや筋肉痛などは自然に治ることが多いですが、インナーマッスルが弱く、肩関節が不安定な場合には痛みが長期間続くこともあるでしょう。インナーマッスルを鍛えて柔軟性を高めておくと、痛みの予防や改善につながるとされています。
筋肉痛の予防策とは?
筋肉痛は、筋肉が太く強くなる過程でごく自然なことです。それでも、日々を快適に過ごすため、筋肉痛をできる限り軽減させたいものですよね。そこで、運動前、運動中、運動後にできる予防策をお伝えします。
運動前:朝食をきちんと摂る
運動をする日は、朝食を摂ることが鉄則です。実は空腹状態でトレーニングは、逆効果。空腹状態ということは、体を動かすためのエネルギーがない状態です。そんな状態を察知した身体は、体内の筋肉を分解することでエネルギーを作り、体を動かす力にしてしまいます。
また、食後にトレーニングをする際は、1~2時間は空けるようにしましょう。朝からたくさん食べられない、時間がないという人は、バナナ1本、ヨーグルト、シリアルなどからはじめてみてはいかがでしょうか。
運動中:こまめな水分補給
トレーニングは運動に集中していると、水分補給を控えがちに。運動前は必ず水分を摂り、運動中もこまめに補給するようにしましょう。水分は、筋肉に必要な栄養を届けたり、疲労物質を外に排出してくれたりします。運動後も、失った水分を取り戻す必要があるため、のどの渇きを感じていなくてもしっかり水分を補給するようにしましょう。
運動後:ストレッチで筋肉をほぐす
運動後は、クールダウンをかねたストレッチを行うことがおすすめです。運動後しばらくすると筋肉は硬化していきますが、ストレッチは筋肉の柔軟性を回復させます。また、ストレッチで筋肉を刺激することで血流を増やせれば、筋線維に必要な栄養が届き、たまった老廃物なども排出できます。つまり回復につながるというわけです。
日頃からストレッチやマッサージなどをして筋肉をゆるめ、かたくならないようにしておくことも筋肉痛の予防になります。
日常的に筋肉を使うことを意識しよう!
筋肉痛は、普段使わない筋肉を急に動かしたときに起こりやすいといわれています。そのため、日頃から定期的に全身を動かしましょう。
有酸素運動などを取り入れて血流をよくし、毛細血管のすみずみまで酸素や栄養を届けるよう心がけましょう。
筋肉痛になってしまったときの対処法
「対策を試みたけど、それでも筋肉痛になってしまった!」という方向けに、筋肉痛になってしまったときの対処法をご紹介します。
無理に動かさない
筋肉痛があるということは、筋肉の回復が終わっていないことを意味します。この期間にトレーニングをしても、筋肉の損傷が進むだけで、トレーニングの効果はあまり期待できません。さらに、痛みがあると身体を動かせる範囲も制限され、十分な負荷をかけられず、効果的なトレーニングにはつながりません。筋肉痛があるときは、無理をせず、いったん筋肉を休ませましょう。
冷やす
運動直後は、冷やすことがおすすめです。ただし、冷やしすぎると筋肉の組織が冷えてかたくなり、血行不良が起き、修復させるスピードを下げてしまいます。保冷剤や袋に氷を入れたものを直接、肌に当てると冷やしすぎてしまうので、タオルや布などで保冷剤を巻いてから冷やすのがいいでしょう。
セルフケアで痛みを和らげる
筋トレが原因の筋肉痛は、セルフケアで痛みを緩和することができます。ひどい痛みがある場合は、まず安静にすること、冷やすことが優先ですが、痛みが治まってきたら、セルフケアを行ってみましょう。
具体的には、お風呂に入ったときに軽くマッサージしたり、曲げ伸ばしをしたりしながら身体全体を温める、お風呂上がりにはストレッチを行うなどの方法があります。セルフケアを行うことで、筋肉痛が和らぎ、筋肉の疲労物質も流れやすくなります。同時に、必要な酸素や栄養を取り込み、身体の隅々まで行き渡るように、血流を促しましょう。
温める
運動直後以外は、お風呂などで身体を温めて血行を促進しましょう。38~40℃くらいのお風呂に15分ほど入浴すればOKです。筋肉痛は、筋肉が炎症を起こしている状態なので、炎症(痛み)がおさまったら、温めて血流を良くすることで回復が早くなります。
タンパク質を積極的にとる
筋肉痛を緩和させるためには、運動前だけでなく運動後の栄養補給も大切です。まずは栄養バランスのとれた食事をとること。特にタンパク質が多く含まれている食材を積極的に摂取することで、筋肉の修復を助け、筋肉痛の改善にも効果が期待できます。
タンパク質は肉魚、大豆製品、乳製品などに多く含まれています。最近ではコンビニなどでも高タンパク質なドリンクや軽食が数多く売られていますので、上手に活用しましょう。
睡眠をしっかりと取る
筋肉を激しく動かした日や慣れない運動をした日は、十分な睡眠をとることも大切です。心身をリラックスさせて、早めの就寝を心がけましょう。
ベストな睡眠時間は時間帯や人によって異なりますが、7〜8時間といわれています。睡眠が十分にとれなければ成長ホルモンが分泌されず、免疫力が低下します。成長ホルモンは細胞の新陳代謝を促すので、筋肉痛などの回復も早める効果があります。また、睡眠には脳と身体にかかるストレス、疲労などを取り除くはたらきがあり、体を健康な状態に保つことはもちろん、メンタルヘルスの向上にもつながります。
さまざまな対処法をご紹介しましたが、それでも筋肉痛がなかなか治らない場合、ケガや病気の可能性もあるため、違和感がある場合は早めに医療機関へ相談しましょう。
トレーニング前後もケアを怠らず、快適なトレーニングライフを
インナーマッスルは比較的、筋肉痛になりにくいとはいわれていますが、それでも筋肉痛になることはあります。
筋肉痛を軽減させるためには、トレーニング前後にインナーマッスルをケアすることが重要です。
今回、ご紹介したいような予防策や対処法を取り入れて、日々のトレーニングを楽しみましょう!
インナーマッスルの具体的なトレーニング方法はこちら記事で紹介しているので、参考にしてみてください。