不眠に悩む人に効果があるとされる呼吸法が478呼吸法です。呼吸を3段階に分けながら「息を吸う→息を止める→息を吐く」ということを繰り返す呼吸法ですが、この呼吸法、やりすぎると体に思いも寄らない変化をもたらすことになります。
基本的には良い変化のはずなのですが、中には日常生活にちょっと支障をきたす可能性のある変化にも見舞われる可能性も無いわけではありません。この記事では、478呼吸法の方法とその効果、そして注意すべき点をご紹介いたします。
また、478呼吸法をできないときの代わりの呼吸方法も2種類、ご紹介いたします。
478呼吸法ってどんなもの
不眠に苦しみ、安眠を求める人の救世主とも言える478呼吸法とは、一体どのようなものなのでしょうか。ここでは478呼吸法の全体像をご紹介いたします。
① 478呼吸法の方法
478呼吸法自体は、けして難しい呼吸法ではありません。手順としては「4秒かけて息を吸う→7秒間呼吸を止める→8秒かけて息を吐く」ということの繰り返しです。
この時重要なことは、まず、息を吸う時にできるだけ目一杯外気を取り入れること。また息を吐き出すときには、体の中の空気を出すつもりで息を吐くことの2つです。この呼吸方法を5~6回ほど繰り返します。
② 478呼吸法の効果
478呼吸法で主に動くのは、腹部にある横膈膜です。この筋肉が動くことにより、横膈膜の中やその近辺に集まる副交感神経が刺激されます。
その結果、血圧や脈拍が下がったりします。また横膈膜が動くことでその下にある内臓の胃や腸が刺激され、消化器系等の不調が改善されたり、便秘が解消される人もいます。
しかし、478呼吸法の最も大きな効果は「リラックス効果」であり、安眠に導く効果が高いことでしょう。まず、478呼吸法を実行することで、より多くの酸素を体の中に取り入れることができるようになります。
その酸素は脳にも行き渡り、脳から幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」が分泌されます。このセロトニンの働きにより人間の心身はリラックスしやすくなります。
同時に478呼吸で体に酸素が行き渡ることにより、体の血行の流れが良くなります。そのため手足の先まで血流が行き渡るようにるため、手足の体温が上がり、眠りやすくなります。
こうした理由から478呼吸が安眠をもたらす呼吸といわれているのです。
③ いつ478呼吸法をすると良いのか
夜寝る前が特におすすめです。布団の中なら、478呼吸をしている最中にリラックスして眠ってしまっても、寝冷えなどの心配はありません。また緊張感が続いて、ちょっとリラックスしたいときなどに478呼吸を2~3回ぐらいすることもおすすめです。
478呼吸法をしないほうが良い時
このように体に良い効果をもたらすであろう478呼吸ですが、実は一日のタイムテーブルの中でこの呼吸法をやらない方が良い時というのも存在します。
具体的には次のようなときには、478呼吸法を避けることをおすすめいたします。
① 自律神経を活発化させたい時
478呼吸というのはどちらかというと副交感神経の優位にするための呼吸法です。副交感神経とは「リラックス」あるいは「休む」ための神経です。そのため、「よし、これから活動するぞ!」という状況の前には478呼吸法をすることは避けたほうが良いでしょう。
「呼吸と自立神経の関係」についてこちらの記事で詳しくご紹介しておりますので、合わせてお読みくださいませ。
呼吸方法を変えて自律神経バランスを整えよう!【医師が詳しく解説!】
② 何か身体行動をしている時
通常スポーツなどをしている最中には、478呼吸はしないほうが良いでしょう
スポーツをしている最中というのは、体が動いていると同時に、自律神経が活発に動いている状態です。つまり副交感神経よりも自律神経が活発に動く必要があるときなので、478呼吸を積極的にする時間帯ではないでしょう。
とはいえ、例外としてスポーツの試合の直前などで緊張しすぎてしまった時などは、478呼吸を取り入れることで心身が安定し、自分のプレーに集中できる効果もあります。
③ 眠ってはいけない授業や会議がある時
どうしても眠ることが許されないような授業や仕事が後ろに控えているときも、478呼吸をするのは避けたほうが良いでしょう。
478呼吸をすることで、眠るまで行かなくてもリラックス効果が聞きすぎて心身がぼーっとしてしまうこともありえます。
そのため、リラックスのしすぎがあまり好ましくはない状況で478呼吸はしないほうが良いでしょう。ちなみに、食事の直後に478呼吸をすることも避けるべきでしょう。
もちろん食後に眠気に襲われる可能性もありますが、それ以上に食べたものを戻してしまう危険性もあります。
丹田呼吸法を取り入れる
前述のように、一日の生活時間帯によっては、478呼吸法をしないほうが良い時間帯というのもがあります。
例えば、重要な会議でプレゼンテーションする前には、リラックス効果の高い478呼吸をすると、プレゼン前に気が抜けた状態になってしまう可能性があります。でも、プレゼンを含めて人前で話をするときは緊張するもの。そんなとき緊張を鎮める呼吸法をしたいと思うのも人情ではあります。
また、過呼吸になりがちな人は、478呼吸法をするのが少々怖いと感じることもあるでしょう。
加えて、健康な人であっても夜に寝る前に478呼吸法をするのが面倒くさくなることもあるでしょうし、場合によっては寝ながら数を数えること自体が面倒になってしまうこともありえます。
そんなときに取り入れることができる呼吸法の1つとして、「丹田呼吸法」をここでご紹介いたします。
丹田呼吸法とは
丹田というのは、おへその4から5センチメートル下にあるポイントで、人間の重心がこのポイントにあると言われています。とはいえ、丹田という人間の体の器官や内臓が存在するわけではなく、意識的な存在としてある部分です。
この丹田呼吸法は、仏教の一派の禅宗や一部の武道・武術などにも取り入れられている呼吸法です。この呼吸をすることにより、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが増えたり、脳の前部前頭前野の動きが活発になるなどの効果があるとされています。
セロトニンは人間の脳や体を活性化させるホルモンです。そのため、このセロトニンは主に昼間に分泌されるホルモンです。
セロトニンは夜になるとメラトニンという人間の脳や体を休めるホルモンに切り替わります。しかし、夜にメラトニンが正しく分泌されるには、日中にセロトニンが正しく分泌されている必要があるのです。
そのため、セロトニンの分泌を活発化させる丹田呼吸法は、朝に行うのがおすすめです。
夜に眠るための準備はその日の朝から始まっているのです。
478呼吸法ができないときは、丹田呼吸法を
前述したように、478呼吸法は夜に行ったほうが良い呼吸法で、丹田呼吸法は朝に行ったほうがよい呼吸法です。
ともに良い眠りを誘うことができる呼吸法ですが、夜に478呼吸法をするのが面倒な人、あるいは過呼吸などの症状が出やすいために478呼吸法を取り入れることが難しい人は、この丹田呼吸法を取り入れてみたほうが良いでしょう。
また、丹田呼吸法は主に腹部にある筋肉を刺激しやすい呼吸法でもあります。丹田呼吸法をすることにより、腹斜筋・大腰筋・腸骨筋といった腹部の大きな筋肉を刺激することができるのです。
こうした腹部の大きな筋肉郡を刺激すると、自動的に筋トレをしている形になります。つまり、丹田呼吸法により腹部の大きな筋肉の筋力トレーニングをしていることになるのです。
その結果、お腹の周りの脂肪が減り筋肉が腹部につくことで、見た目にも体型がスッキリするという、嬉しい効果もあります。もちろん、お腹周りの筋肉を鍛えるのですから、体幹も強くなります。
このように丹田呼吸法には、様々な付随する効果があるのも事実なのです。
丹田呼吸法のやり方
ここでは丹田呼吸法の実際のやり方をご紹介します。
まず、両足を肩幅に軽く開いて立ちます。その後、軽く目を閉じて右手をおへその下から5センチメートルほどの場所に置きます。
続いて、右手の下の丹田を意識しながら、口から息を吐き出します。このとき体の中の空気を全部吐き出すような気持ちで、息を吐いてみましょう。息を吐き出す時間は長くても短くても構いませんが、いつもの呼吸より長めに口から息を吐き出すつもりで呼吸すると、上手に息を吐ききることができるでしょう。
その後、右手を丹田に当てたまま、鼻から息をゆっくりと吸います。息がこれ以上吸えない状態になったら、また口から息を吐き出しましょう。
丹田を意識しながら呼吸すると、いつもよりも長く息を吸うことができますし、いつもよりも長く息を吐くこともできるようになっていることに気がつくでしょう。
この呼吸を朝に3分から5分ほど繰り返すと、夜にゆっくり眠れるようになりますよ。
通常の深呼吸をするだけでも効果あり
478呼吸法を取り入れられない人には、普通の腹式呼吸をするだけでも体で体に良い効果を実感する事ができます。実は普通の深呼吸を夜眠る前の布団の中でするだけでも、十分に安眠を誘う事もできます。とはいえ、深呼吸の仕方とほんの少しのイメージトレーニングを取り入れると、普通の深呼吸の効果がUPするのでおすすめです。
深呼吸をカウントする
まず、布団の上に仰向けに寝転び、自分が気持ち良いと感じるぐらいの大の字になってみましょう。
そして、軽く目を閉じてまず、口から体の中の空気を全部吐き出すような気持ちで、息を吐き出します。「あーぁ」とあくびや声が出てしまっても気にすることはありません。むしろリラックスできいる証拠ですので、安心して息を吐き出しましょう。
息を吐き切ったら、今度は思い切り息を吸い込みます。このとき、もしできれば鼻から息を吸い込むと良いのですが、口から吸い込んでしまってもまったく問題はありません。急がずゆっくりと息を吸い込みましょう。
そして、息を吸い込んだら、今度は再度息を吐ききります。
おすすめなのは、この深呼吸の回数を数えることです。とはいえ、この深呼吸の回数が多いから良い、というものではありません。
ゆっくりと取り入れた外気を体の隅々まで運ぶつもりで、深呼吸の数を数えましょう。
こうしたリラックスしたときの深呼吸は、自然に腹式呼吸になり、お腹のあたりが動いていると思います。とはいえ、意識して腹筋を動かすことは考えず、気持ちよく深呼吸することを優先させましょう。
これだけで、気が付かないうちに眠れてしまう人もおおいかもしれませんね。
体の中の悪いものをすべて吐き出す気持ちで
特に息を吐くときには、体の中の痛みやこわばりのような悪いものをすべて吐き出す気持ちで呼吸してみましょう。
イメージとしては、自分の体の中の痛いところや違和感を感じるところ、そしてなんとなく動きの悪いところにある黒いもやもやが、呼吸することで肺に移動し、息を吐き出すときにその黒いもやもやも一緒に吐き出しているイメージです。
体の痛みだけでなく、心の痛みやネガティブな考えも同じように、呼吸と一緒に自分の体の外に出しているような感覚で息を吐き出してみると、なんとなく頭がスッキリしたような感じになり、よく眠れるようになります。
ちなみに、この深呼吸をしたあとに眠ると、酸欠状態が解消されるためか、悪い夢を見ることも減るようです。
布団の中で気持ちよく呼吸しよう
色々と眠る前の深呼吸やその時のイメージについて説明してきましたが、最も重要なことは、眠る人自身が気持ちよく深呼吸できることです。難しいことを一切考えず、自分が気持ち良いと感じるペースで深呼吸ができるようになれば、スムーズに眠りにつくこともできるようになるでしょう。
人によっては、夜眠る前にいろいろと今日1日のことが頭の中をよぎったり、翌日の心配事で悩んでしまったりする人もいることでしょう。そんなときは、深呼吸を数えて、ゆっくりと眠りに付きましょう。
478呼吸法をやりすぎるとどうなる
心身をリラックスさせる効果の高い478呼吸ですが、心身に思いもしない悪影響を与える可能性というのも否定できません。具体的には次のようなことが起こる可能性もありますので、ご注意ください。
① 過呼吸になる可能性も
日頃浅い呼吸になれている人のなかには、急に478呼吸を真剣に行うと、過呼吸になってしまう人もいます。これを避けるため、もしも478呼吸をしている最中にめまいや手足のしびれを感じた場合には、すぐに呼吸を日常生活と同じものに戻してください。
また478呼吸を初めて行う人は、何度もこの呼吸を繰り返すことはせず、最初は1~2回から始めてみましょう。また、最初のうちはうまく息を吸ったり止めたりできなくても大丈夫。息を吸うときよりも吐く時に気持ちだけ長く時間を掛けるつもりで呼吸してみましょう。
② 副交感神経が強くなりすぎる
前述のように副交感神経が強くなりすぎると、人によっては眠気が増したり、頭がぼーっとしてしまうこともあります。
こうした状況は心身ともにリラックスしている証拠であるため、これはこれで良いことなのですが、例えば車の運転をする直前にこうした状況になるのは避けたほうが良いでしょう。
③ 横膈膜がうまく使えるようになるまでは、無理をしないこと
横膈膜を使ってうまく腹式呼吸ができない人は、この478呼吸ができるように鳴るまでに少し時間がかかるかもしれません。
そうしたときは478ではなく448や457でも良いので、息を吸うときよりも吐く時に時間を長くかけることを意識する呼吸法を取りれながら、時間をかけて478呼吸をマスターしていきましょう。
ちなみに、横膈膜はストレスや暴飲暴食、そして生活習慣の乱れなどで思いもしないタイミングで動くことがあり、その動きがこの記事で取り上げたようなしゃっくりになります。そのため、478呼吸を取り入れてから急にしゃっくりなどが増えた場合には、少し478呼吸を止めて体調の様子を見たほうが良いでしょう。
478呼吸法を使うときを見極めることが大切
不眠に悩む人には、救世主とも言える478呼吸。副交感神経を優位にして心身をリラックスさせる呼吸法ですが、腹式呼吸に慣れていないひとは過呼吸になる可能性もあるなど、思いもしない悪影響が体に現れる可能性もあることを忘れてはいけません。
また、478呼吸は心身をリラックスさせる効果があるので、緊張感が必要な場面にこれから向かう人は、直前に478呼吸は避けたほうが良いでしょう。
いろいろ思いもしない体への影響がありますが、基本的に478呼吸は夜寝る前にのんびりとするとするには良い呼吸法なので、夜眠ることに不安がある人は是非取り入れてみてはいかがでしょうか。