子どもに習わせたい習いごととして長年、上位に入っているスイミング(水泳)。習わせたい理由として「風邪をひきにくくなる」「心肺機能が向上する」などの理由が多く聞かれます。
そこで今回は、肺の健康状態を知る目安となる肺活量と水泳には、どのような関係があるのか紐解きます。
ご自身の肺活量アップや健康維持に水泳を取り入れたいと考えている方はぜひ参考にしてみてくださいね。
肺活量について知ろう!
一般的に肺活量が多いといわれる水泳選手の肺活量を見ていきましょう。また、肺活量と深い関係にある「呼吸筋」についてもご紹介します。
水泳選手の肺活量
肺活量とは、力いっぱい吸い込んだ空気を、最大限努力して吐き出した空気の量のこと。肺活量は肺が出し入れできる空気の量を示しています。
オリンピックなど国際的な大会で活躍する選手は肺活量が多い傾向にあります。中でも、競泳やアーティスティックスイミングなど水泳競技の選手は、特に肺活量が多いといわれています。
一般的な男性の肺活量の平均値が2,000〜3,000mlであるのに対して、水泳選手の肺活量は6,000〜8,000mlにも上ります。
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肺活量と呼吸筋
呼吸筋という名称を聞いたことがあるでしょうか。呼吸筋は字のごとく、呼吸に関わる筋肉のこと。呼吸筋は肺活量と深い関係にあります。
人間が呼吸するとき、肺自体の力では空気を吸い込んだり、吐いたりすることができません。そこで、肺のまわりの筋肉が作用します。たとえば、息を吸うと横隔膜がはたらき肋骨を広げます。すると肺が膨らみ、酸素が体内に入ってくるのです。このとき、横隔膜などの筋肉が呼吸筋にあたります。
そのため、呼吸筋を鍛えることは、肺活量アップの重要なカギといえます。
水泳が肺活量の向上にいいといわれる理由
いよいよ、水泳が肺活量向上に役立つといわれる理由をくわしく見ていきましょう。
息継ぎによって酸素量が制限される
水泳とほかのスポーツとの最大の違いは、呼吸に制限がかかるところ。この“制限”が、心肺機能を強化するうえで重要なポイントとなります。
水泳では、顔を水につけている間は呼吸を我慢、もしくは息を吐き出し、息継ぎのタイミングで、できる限りたくさんの空気を吸い込もうとします。この一連の動きを繰り返して行うことで「短い時間で、息を最大限に吸う」ことが自然に身につき、肺活量を鍛えることができます。
水圧によって肺に負荷がかかる
水泳によって肺活量を鍛えられる一因として、身体にかかる「水圧」が挙げられます。プールやお風呂で、首まで水に浸かっていると呼吸が苦しくなるという経験をしたことはありませんか?この原因は水圧であるため、プールやお風呂から出ると呼吸が楽になることがあります。
水中では立っているだけでも身体に水圧がかかります。水圧で肺が押さえつけられている状態で、陸上と同じだけの量の酸素を吸い込むためには、胸のまわりにある呼吸筋をより活発に動かす必要があります。そのため自ずと呼吸筋が鍛えられ、結果として肺活量の増加をもたらします。
全身の筋力が鍛えられる
水泳は全身を使う運動であるため、全身の筋肉をバランスよく鍛えることができます。また、水中では、水の抵抗によっていつものトレーニングを行っただけでも陸上で行うよりさらに負荷をかけることができます。
水中にいるだけで身体には水圧がかかり、1回の呼吸で肺に取り入れられる酸素量は減少しています。そこで全身運動である水泳を行うと、身体はより多くの酸素を必要とします。しかし、身体が十分な量の酸素を血液に送り込むのに時間がかかるため、それだけ肺に負荷をかけることができるのです。
けがや故障のリスクが少ない
水泳や水中でのトレーニングは、ランニングなど陸上で行う運動よりも足や腰を痛めにくく、ある程度の時間、継続して運動することができるというメリットがあります。
水のなかでは身体に、水に浮く力=浮力がかかります。この浮力によって陸上に比べて身体への負荷を少なくしながら運動を行うことができるため、自分の体重によるけがなどのリスクも少なくなります。年齢や体重、運動経験などかかわらず、誰でも、自分のペースでトレーニングを継続して行うことが可能となるのです。
肺活量を鍛えるメリット
水泳によって肺活量が鍛えられる理由をお伝えしてきましたが、肺活量を鍛えるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
運動能力が向上する
人間の活動の根本を支える呼吸。この呼吸機能において肺活量を鍛えると、運動能力が向上するといわれています。
私たちは呼吸によって酸素を体内に取り入れて、その酸素をエネルギーに変えて身体を動かしています。つまり、多くの酸素を体内に取り入れられることは、運動エネルギーもより多く作り出せるということ。
肺活量がアップすると体力もアップするため、肺活量を鍛えることは運動能力の向上につながります。
基礎代謝がアップ
肺活量がアップすると身体への酸素の供給量も増えます。体内に取り入れる酸素が多ければ多いほど、全身の血管が活性化され血流も促されるため、基礎代謝量がアップします。基礎代謝量がアップするほど、脂肪を燃焼しやすく太りにくい身体になります。
免疫力が上がる
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、益々注目が集まる免疫力。免疫力とは、身体をウイルスや細菌から守り健康な状態を保つ、身体の防衛システムのことです。
肺活量が増えると、身体に取り込める酸素の量が増えるため身体が温まって、血流も促進されます。そして血液に含まれる免疫細胞が活性化されることで、免疫力アップにつながります。
集中力が上がる
「深呼吸をすると頭がスッキリした」「深呼吸をすると集中力がアップした」という経験をしたことはありませんか?
特に脳は酸素不足になりがちであるといわれています。そこで深い呼吸をすると、脳を含む全身のすみずみまで酸素が行き渡り、頭がスッキリし、集中力も増すでしょう。そのため、肺活量を鍛えて、肺をしっかり膨らませた深い呼吸ができるようになると、集中力がアップするといわれています。
また、肺活量を鍛えると呼吸筋の一つである横隔膜が活発に働きます。横隔膜には自律神経が集中しているといわれています。肺活量を鍛えることで自律神経のうち副交感神経を刺激し、身体をリラックスモードへと導きます。このリラックス状態により、集中力を回復させることができるのです。
肺活量と水泳は、互いによい効果をもたらす関係である
水泳の最大の特徴は、自由に呼吸ができないこと。このことから、身体はいつもより効率よく体内に酸素を取り入れ、運搬しようとします。その結果、水泳によって肺活量の向上が期待できます。
肺活量がアップすると、水泳はもちろん、スポーツ全般における運動能力が向上するでしょう。このように、肺活量と水泳は、双方によい効果をもたらす関係であるといえます。
普段、何気なく行っている呼吸はわたしたちのさまざまな活動を根本から支える、人間にとって重要な機能です。今回の記事を参考に、水泳をはじめとする肺活量のトレーニングを生活に取り入れてみてくださいね。