妊娠中に大きく体型が変化し、出産後も体型が戻るか心配……という悩みを持つ人も多いのではないでしょうか。
妊娠、出産は女性の心と身体にさまざまな変化をもたらし、産後も、ママの身体はとてもデリケートな状態が続いています。そのため「すぐに体型を戻したい」「運動したい」と思っても、筋トレやエクササイズをはじめるためには安全かつ適切な時期があります。
そこで、今回は産後の筋トレはいつからはじめられるのか、産後におすすめの筋トレや注意すべきポイントをご紹介します。
産後の身体と筋トレ・エクササイズ
産後の身体にはどのような変化が起きているのか、また、産後の筋トレの開始時期の目安についてお伝えします。
産後の身体の変化
まず産後の体型ついて、多くの人が気になるのが「ぽっこりお腹」ではないでしょうか。
妊娠期間中、10ヵ月かけて大きく膨らんだ子宮は、出産後、すぐに元の大きさに戻るわけではありません。子宮は1ヵ月半程度かけて、ゆっくりと元の大きさに戻っていきます。また、腹筋も赤ちゃんの成長にともなって引き伸ばされるため、産後すぐは腹筋が弱まっている状態となっています。
さらに、産後に緩んでいるのは腹筋だけではありません。妊娠、出産を経て、骨盤は開いた状態になっています。緩んだ骨盤をそのまま放っておくと、腰痛や恥骨痛、尿もれなど産後トラブルの原因に。そのため、産後は骨盤を正しい位置に戻すことが大切であるとされています。
また、産後は、心にも大きな変化があります。妊娠中はプロゲストロンやエストロゲンという女性ホルモンが増加しますが、出産によってそれらのホルモンが急激に減少することが知られています。ホルモンバランスが崩れると、抜け毛や肌あれなどの不調を感じたり、精神的に不安定になることがあります。
「なんでもないのに涙が出てくる」「漠然と不安が募る」「ピリピリ、イライラが続く」「赤ちゃんがかわいいと思えない」などの心的症状が現れ、これは、産後うつと呼ばれます。産後うつは、出産後に10~20%の女性が発症するといわれているのです。このように、妊娠、出産は女性の心と身体にさまざまな変化をもたらします。
産後の筋トレはいつからはじめていいの?
産後の筋トレやエクササイズは、自然分娩で出産時に特に問題がなかった人であれば、産後の1ヵ月健診で医師からのOKが出てからはじめると安心でしょう。帝王切開の人は2ヵ月以降が目安です。帝王切開の傷の治り具合にもよるため、筋トレを開始する時期は医師と相談しましょう。
「産褥期(さんじょくき)」という言葉があるように、出産後、身体が元の状態に戻るためにはおよそ6~8週間の期間が必要であるといわれています。その期間に、無理な運動や筋トレを行うと、身体に大きな負担がかかるだけでなく、後々、腰痛や腹痛などの不調を招く原因にもなりかねません。
出産後の身体の回復状況は人によって異なりますので、自分の体調をみながら、無理せず、軽い運動からはじめましょう。
産後6カ月までがカギ!
産後に体重や体型を戻したいと考えたとき、産後6ヵ月までが筋トレやエクササイズに適した時期であるといわれています。
産後6ヵ月までは、骨盤が動きやすくなっていたり、妊娠中に蓄えていた脂肪が落ちやすいなど、身体が元の状態に戻りやすくなっています。また、授乳中は想像以上にエネルギーが消費されます。
そのため、脂肪を落とし筋肉をつけるためには、産後6ヵ月以内に筋トレに取り組むほうが効果的であるといえます。それでもやはり焦りは禁物。産後の身体の回復状況をみながら、無理なく筋トレやエクササイズを行いましょう。
産後におすすめの筋トレ・エクササイズ
ぽっこりお腹や尿もれ、育児でなかなかまとまった時間が取れない……など、産後の悩みは尽きません。そこで、産後のお悩み別におすすめの筋トレをご紹介します。
ぽっこりお腹を引き締めたいなら「レッグレイズ」
産後にもっとも気になるのは、皮膚がたるんでぽっこりと出てしまったお腹。このぽっこりお腹を引き締めるためには、腹筋の下部のトレーニングが欠かせません。そこで、腹筋の下部を鍛えられる「レッグレイズ」をご紹介します。
(やり方)
1. 仰向けで寝て手はお尻の下横にをおき、足を伸ばす
2. ひざを軽くゆるめ、へそを見るように顔を起こす
3. 息を吐きながら垂直まで足を上げる
4. 息を吸いながら床につくギリギリまでゆっくり足を下ろす
こちらを10〜15回を目安に行いましょう。
尿もれ解消!骨盤底筋群を鍛える「ハンドニー」
産後の尿もれは、人に相談しにくい悩みの一つです。産後の尿もれは妊娠や出産によって、骨盤底筋群がゆるんでしまったことが大きな原因。そこで、尿もれを解消するため、骨盤底筋群を鍛えるトレーニング「ハンドニー」をご紹介します。
(やり方)
1.手は両肩の下、足は骨盤幅に開いて四つんばいになる
2.片方の手をまっすぐ正面に向けて伸ばし、対角となる足を後方にまっすぐ伸ばす
3.そのまま10秒キープする
左右10回ずつを目安に行いましょう。
手足を上げたときに、お尻の穴をきゅっと締めることがポイント。また、骨盤底筋群は、座る、立つ、歩くなど日常の動作のなかでも意識しやすい部分ですので、気づいたときに骨盤底筋群を締めたり緩めたりしてみましょう。
赤ちゃんを抱っこしながら「スクワット」
「育児で筋トレをする時間がなかなか取れない」というときに、赤ちゃんをあやしながら、同時に筋トレを行うことができるのが「スクワット」です。スクワットは背中や太もも、お尻など大きな筋肉を中心に鍛えることができます。
(やり方)
1. 赤ちゃんを両手で抱っこして、足を肩幅よりもやや広めに開きまっすぐ立つ
2. 息を吐きながら、太ももと地面が平行になるまでゆっくりお尻を下げる
4. そのまま、2秒間キープ
5. 息を吸いながら、ゆっくり元に戻す
3〜5回程度を目安に行いましょう。
赤ちゃんを抱っこしながらスクワットを行うときは、足元が安定している安全な場所で行い、上下運動の速さに注意しましょう。
速すぎるスピードで上下したり、赤ちゃんの頭ががくんと揺れたりするような動きは、赤ちゃんの頭部へのダメージに繋がる可能性があり危険です。赤ちゃんの身体の揺れに十分注意しながら、ゆっくりトレーニングを行いましょう。
産後の筋トレ・エクササイズで注意すべきポイント
産後の筋トレやエクササイズで、特に注意したい3つのポイントをお伝えします。
無理をしない
産後に筋トレや運動を行う際には、開始時期、頻度、負荷など、そのどれにおいても「無理をしないこと」が基本です。
特に出産後すぐは、元の状態に戻っていない身体と慣れない育児で疲れを感じやすいもの。「早く体型や体力を戻したい」「育児以外に運動をしたい」という気持ちもよく分かりますが、まずは休息をとることを優先にしましょう。そして、身体と相談しながら徐々に軽い運動や筋トレを取り入れましょう。
姿勢に気をつける
赤ちゃんのお世話をしたり、抱っこしたりすると、猫背姿勢になりやすいもの。その状態で筋トレを行うと、正しいフォームが身につかないだけでなく、故障の原因にもなります。そのため、ときには鏡で姿勢をチェックするなど、育児中や筋トレを行う際には、姿勢に十分気をつけましょう。
和食を中心にバランスのいい食事を心がける
産後の身体にとって、筋トレやエクササイズと同じくらい大切なのが食事です。授乳中であれば、母乳はママの食べたものでできているため、脂っこい食べものや塩分が多い食事は控えたいところ。その点、和食は、あっさりした食事で栄養もバランスよく摂ることができるといわれています。和食を中心に、いろいろな食材を摂りましょう。
産後は焦らず、身体と相談しながら軽い運動からはじめよう
産後は育児や家事に忙しく、夜も授乳などによって眠れない日が続くと疲れが溜まりがちに。そんなときは、赤ちゃんが寝たら一緒に横になるなど休むことを優先してくださいね。
「わざわざ運動する時間がない!」というときは、赤ちゃんの散歩もかねて、ベビーカーで一緒にウォーキングをすることもおすすめです。
産後は「すぐにでも体型を戻したい」と焦ってしまいますが、まずはご自身の身体をいたわりながら、生活に少しずつ運動や筋トレを取り入れましょう。