呼吸は人間が生きるために必要不可欠な動作です。そんな呼吸機能を担っているおもな臓器が肺。肺の健康状態をあらわすためには「肺活量」や「肺年齢」といった指標が用いられています。また、肺の機能は20歳前後をピークに、加齢とともに低下するといわれています。
そこで今回は、肺年齢という言葉の意味や、肺活量の低下と年齢にはどのような関係があるのか、解説します。
肺年齢とは
最近耳にするようになった「肺年齢」という言葉を知っているでしょうか。肌年齢や血管年齢と同じように、肺も年齢におきかえてその健康状態を知ることができます。ここでは、この「肺年齢」についてくわしく見ていきましょう。
肺の健康状態を知る目安
肺年齢とは、年齢という身近な指標を用いることで、自分の肺の健康状態を知るための目安です。実際の年齢よりも肺年齢が高ければ高いほど、呼吸機能が衰えていることを意味し、低ければ低いほど呼吸機能は健康ということになります。
肺の老化は目に見えて分かるわけではありません。そこで、肺年齢を知ることで肺の健康意識を高め、健康維持や禁煙指導、疾患の早期発見などに役立てることができます。まずは自分の肺年齢を知ること、検診や人間ドッグなどで定期的な測定を心がけることが大切です。
肺年齢の測り方
肺年齢は、肺機能検査で1秒間に吐ける空気の量である1秒量を計測し、標準となる数値と比較することで算出されます。肺機能検査で測定した一秒量にもとづき、次の計算式で求められます。
- 肺年齢の計算式 -
<男性>肺年齢=( 0.036×身長(cm)-1.178-1秒量(L))/0.028
<女性>肺年齢=( 0.022×身長(cm)-0.005-1秒量(L))/0.022
肺年齢の算出式は、日本呼吸器学会の肺生理専門委員会が2001年に作成した「1秒量の標準回帰式」をもとに考案されました。同性、同世代と比較して自分の呼吸機能がどのような状態であるか知ることができます。
最近注目されているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)
「肺の生活習慣病」として近年注目を集めているのがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)で、別名たばこ病とも呼ばれています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、空気の通り道である気道や、酸素を取り込む肺胞に炎症が起こる病気です。日本人の約540万人がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者であると推定されています。
呼吸器疾患の初期段階では、せき、たん、息切れなどの症状を自覚しにくいため、早期の診断には呼吸機能検査が不可欠です。このことからも、肺年齢を使った検査や診断に期待が寄せられています。
肺活量が低下する主な要因
肺活量が低下するおもな要因として①加齢、②喫煙、③運動不足、④肥満といった4つの要因が考えられます。それらの要因を一つずつくわしく見ていきましょう。
① 加齢
人間の身体にある臓器の機能は、加齢とともに低下します。なかでも加齢変化が著しいのが呼吸機能です。
横隔膜や肋間筋などのおもな呼吸筋は、老化とともに筋力が低下し、十分に呼吸運動ができなくなります。また、胸壁がかたくなることによる肺活量の低下もみられます。
さらに、心肺機能は全身の持久力にも関係するため、その機能低下は不活動な生活につながるでしょう。不活動な生活が続くと呼吸機能はどんどん衰えるという悪循環に陥るおそれがあるのです。
② 喫煙
もっとも呼吸器に影響を与えるのが、喫煙習慣です。肺の働きは、健康な人でも年齢を重ねることにより落ちていきますが、たばこで肺を傷めることでより早く衰えるでしょう。
そのため、肺年齢を若く保つためには禁煙することがもっとも大切です。肺年齢の高齢化を放置して喫煙などの習慣を続ければ、さらに肺の加齢が進行し、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんのリスクが高まるといわれています。
③ 運動不足
運動不足による呼吸筋の筋力低下も肺活量の低下に影響します。そのため、日ごろから適度な運動を行うことによって呼吸筋を鍛えれば、呼吸機能の維持や改善に効果があり、肺年齢も若返るといわれています。日ごろから散歩や自身の体調に合わせた運動を心がけることが大切でしょう。
運動不足によるさまざまな身体への影響は、下記の記事でくわしく解説していますので、合わせてご覧ください。
【人生100年時代!運動とどう付き合う?】運動不足による身体への影響
④ 肥満
肥満により、肺を囲むに胸部に脂肪が多くなると、息を吸ったときに肺が広がるためのスペースが少なくなり、肺活量を低下させてしまいます。そのため、体内の換気が不十分となり血中酸素濃度が低下、最終的には二酸化炭素が増加すると考えられています。
肥満のために肺の機能は知らず知らずのうちに低下し、肺の老化は加速してしまうのです。
肺活量の低下を感じたときの対処法
肺活量の低下を感じたとき、どのように対処すべきか、具体的な方法をお伝えします。
口すぼめ呼吸
口すぼめ呼吸は、高齢者のリハビリテーションにも活用されている呼吸法です。
口を閉じて鼻から息を吸い、口をすぼめて、2倍の時間をかけてゆっくりと息を吐き出します。口をすぼめて息を吐くと、気道の内側に圧力がかかり、細くなった気管支が広げられ、肺にたまった空気を外に出しやすくなります。
ポイントは強く吹かないこと。ろうそくの火を揺らすようにゆっくりと息を吐きましょう。
呼吸筋のマッサージ
呼吸筋は鍛えるだけでなく、柔軟性を高めることも大切です。そこで取り入れたいのが、呼吸筋のマッサージです。手足の筋肉と同じように、呼吸筋もマッサージによってゆるめて動きやすくしておくことが必要です。トレーニングの前にマッサージやストレッチで呼吸筋をほぐし、肺機能を活性化させましょう。
呼吸筋のマッサージの方法は、こちらの記事で具体的にご紹介していますので、ぜひごチェックしてみてください。
【マスク生活での息苦しさを解消】肋間筋のマッサージを始めよう!
呼吸筋トレーニングデバイス「エアロフィット」
肺活量のトレーニングには、専用のグッズを活用した方法もあります。肺活量のトレーニングにおすすめのグッズの一つが呼吸筋トレーニングデバイス「エアロフィット」です。
エアロフィットは口にくわえて呼吸をし、横隔膜をはじめとする呼吸筋に直接刺激を与えることで肺機能を高めることができます。また、エアロフィットは50g以下と非常に軽量でコンパクトなトレーニンググッズであるため、場所をとらず、旅先にも手軽に持ち運ぶことができます。
トレーニングは1日5〜10分ほどで取り組むことができ、ご自宅でテレビを見ながらなど、好きなときに好きな場所で取り組むことができます。肺活量の低下が気になる方で、効率的に肺活量のトレーニングを行いたい方にはおすすめのグッズです。
エアロフィット・アクティブ / AIROFIT ACTIVE
肺活量は年齢とともに低下するが、低下は予防できる!
肺活量は20歳前後をピークに加齢とともに低下します。また、喫煙習慣や運動不足、肥満なども肺活量の低下を招く一因となります。
ただし、肺活量はトレーニングをすることで増やすことが可能です。今回ご紹介したように、適切な呼吸や呼吸筋のマッサージ、肺活量のトレーニングなどを積極的に行い、肺活量の低下を予防しましょう。
特に今は新型コロナウイルス感染症の流行で、肺はこれまで以上にリスクにさらされています。定期的な検診や生活習慣を通して、今のうちからしっかりと肺をメンテナンスするよう心がけましょう。