「息苦しい」「呼吸がしづらい」「息が吸えない」と感じたとき、多くの人が不安を感じるのではないでしょうか。それでも「息苦しさ」とは日常的に感じやすい生理現象であるため、つい見過ごしてしまいがちです。
「息苦しい」という症状は身体に病気などの異常が見当たらない場合、肺活量の低下が関係している可能性も。ここでは、肺活量の少なさと息苦しさの関係についてご紹介します。肺活量が少ないと感じたときの対処法についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
息苦しさとは
「息苦しい」とはいったいどのような状態なのでしょうか。
息苦しさのメカニズム、対処法とともにご紹介します。
「息苦しい」とはどのような状態?
「息苦しい」という症状には個人差があり、さまざまな表現がありますが、例として次のような自覚症状が挙げられます。
- 少し動いただけで息苦しさを感じる
- 空気が足りないと感じる
- 息が詰まる
- 呼吸するときに不快感を感じる
- もっと息を吸いたいのに吸えない
- もっと息を吐きたいのに吐けない
- 肩を上げ下げしなければ呼吸ができない
など
これらの症状があると「息苦しい」という状態で、医学用語では「呼吸困難」と呼ばれます。呼吸困難は一人ひとりが感じる主観的な感覚なのです。
息苦しさのメカニズム
「息苦しさ」の詳しいメカニズムはわかっていませんが、私たちの身体のなかから「酸素が足りない」というサインが脳へ送られ、呼吸をつかさどる筋肉である呼吸筋に「もっと呼吸をしなさい」という指令を出し、息苦しさが生じるといわれています。
また、日常生活の中で息苦しさを引き起こすものとして、過呼吸があります。私たちはストレスや緊張状態が続くと、知らないうちに軽い過呼吸のような状態に。不安や緊張などで呼吸が乱れると、血液中の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れてしまいます。どれだけ息を吸っても酸素が十分に身体のすみずみまで行きわたらない状態となり、呼吸がしづらい、息苦しいと感じるのです。
息苦しさを感じたときの対処法
「息苦しい」と感じたとき、多くの場合は楽な姿勢になり、安静にすることで自然におさまります。
まずはあわてず、呼吸をしやすい姿勢をとりましょう。近くに座る場所がある場合は座り、座る場所がない場合でも、両手をひざにつき、背中を壁につけて寄り掛かるような姿勢をとることで呼吸がしやすくなります。
しかし、安静にしていても息苦しさが続くときや、治まったと思ってもすぐに「息苦しい」と感じる、頻繁に息苦しさを感じるようなときには、早めにかかりつけの医療機関を受診しましょう。
息苦しさの原因は「肺活量の少なさ」からくるの?
息苦しさの原因はどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、息苦しさの原因や、息苦しさと肺活量の関係について解説します。
加齢による肺活量の低下
呼吸に関わる筋肉を呼吸筋といい、呼吸筋は加齢とともに自然と衰えるといわれています。呼吸筋が衰えると、肺活量の低下につながります。
そのため、少し動いただけでも息苦しい、息切れしてしまうという場合は、加齢による筋力低下が関係している可能性があります。
生活習慣による肺活量の低下
運動不足による肺活量の低下もまた、息苦しさを感じる原因の一つです。最近では、コロナ禍で強いられている活動制限による体力や筋力の低下が、そのまま肺活量の低下へとつながっています。
また、生活習慣のうち、もっとも呼吸器に影響を与えるのが喫煙習慣。健康な人でも加齢によって肺の機能は衰えていきますが、たばこで肺を傷めることでより早く衰えます。
病気の兆候
息苦しさの病的な原因として、肺や心臓の病気の兆候である可能性があります。
肺は血液中に酸素を取り込む機能を持っているため、肺の病気のために、肺がうまく機能しないと息苦しさを感じます。
近年、喫煙などが原因で増加している慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、肺がんなども息苦しさが現れやすい肺の病気です。また、心臓に原因があれば、心不全、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患などの可能性が疑われます。
精神的なストレス
心の病気でも息苦しさを感じることがあり、以下のようなものが挙げられます。
- パニック障害
- 自律神経失調症
- 過換気症候群
など
部屋で静かに過ごしているときや就寝時に息苦しく感じる、常に酸素が足りないように感じる、しかし、楽しいことをやっているときには忘れている。このような症状の場合、心理的なストレスが原因であることがほとんどです。
肺活量が少ないときの3つの対処法
肺活量が少ないと感じたとき、3つの対処法をご紹介します。
① 生活習慣を見直そう
息苦しくなるからといって動かずにいると、全身の筋力は衰えるばかり。呼吸筋も衰え、さらに息苦しさが増すという悪循環に陥る可能性があります。そのため、日中は活動的に過ごし、日ごろから運動を習慣化するように心がけましょう。
また、肺は一度壊れてしまうと取り返しがつきません。すでに息苦しさを自覚していて、喫煙習慣がある場合は、まずは禁煙することをおすすめします。
現代社会において忙しい日々はストレスが溜まり、浅い呼吸になりがちです。時間に追われた生活をするのではなく、できるだけゆったりとしたスケジュールを心がけましょう。一日のうち数回でも、ご自身の呼吸に意識を向け、深い呼吸をすることも必要です。
このように今一度、生活全体を見直し、息苦しさの要因であると思われる習慣を取り除く作業が必要となります。
② 食事を見直そう
食事と肺活量は一見関係がないように思われますが、肺活量のトレーニングでは食事内容の見直しもセットで行うことが大切です。
肥満により体重が増加すると、肺の機能もが影響を受けます。腹部や胸部に脂肪が多くなると、息を吸ったときに肺が広がるためのスペースが少なくなり、肺活量を低下させてしまいます。また、男性は女性よりも腹部に脂肪を多く溜め込んでしまう傾向にあるため、男性の肺機能のほうが低下しやすいといわれています。
しかし、単に食事を減らしただけでは、体重が減り、呼吸に必要な筋肉の力まで落ちてしまいます。そのため、量を減らすことよりも、バランスのいい食事を摂ることを心がけましょう。
③ 呼吸筋ストレッチを取り入れよう
いきなり呼吸筋のトレーニングはハードルが高い場合、まずは呼吸筋のストレッチを取り入れて、呼吸するときに働く筋肉である呼吸筋の柔軟性を高めましょう。呼吸筋は加齢や悪い姿勢によって固くなってしまいます。柔軟性を取り戻せば、深くゆったりした呼吸がしやすくなります。
また、呼吸筋のストレッチには、背中と胸のストレッチが有効であるといわれています。下記の記事では、背中、胸、胸郭などの具体的なストレッチ方法をご紹介していますので、合わせてご覧ください。
呼吸筋を鍛えるためのストレッチとは、どのようなもの?そしてその効果とは?
息苦しさが気になったら早めの対策を!
「息苦しさ」はあなたの身体から のSOS。加齢や運動不足による肺活量の低下や、精神的なストレスなどが原因かもしれません。また、「息苦しさ」は病気の兆候である可能性もあるため、安静にしていても息苦しさを感じる場合は早めに医療機関を受診する必要があります。
原因が分かれば、それぞれの原因に合った対処法を施すことができます。「息苦しい」「呼吸がしにくい」などの自覚症状があれば、見過ごさず、早めの対策を行いましょう。