クレイトン・ヤング選手 シカゴマラソン2026 STRYDデータ分析

ハムストリング損傷から4週間で自己ベスト。クレイトン・ヤング選手、シカゴマラソン2時間05分23秒の裏側をSTRYDデータで読み解く

シカゴマラソンを走るクレイトン・ヤング選手

2026年10月11日のシカゴマラソンで、アメリカのクレイトン・ヤング(Clayton Young)選手が2時間05分23秒で7位に入りました。出場したアメリカ人選手の中でトップ。自己ベスト更新であり、初の2時間6分切り、そして公認コースでアメリカ人が出した記録として史上2番目の速さです。

実はレースの4週間前、出場そのものが危ぶまれていました。9月のグレート・ノース・ラン(ハーフマラソン)の後に受けたMRIで、左ハムストリングに12cmの損傷が見つかっていたのです。

そこからどうやって自己ベストまでたどり着いたのか。STRYD社が公開したパワーデータの分析から、市民ランナーにも参考になるポイントをご紹介します。


クレイトン・ヤング選手とSTRYD

ヤング選手は1993年生まれ。米ブリガム・ヤング大学(BYU)出身で、2019年に全米学生10000mで優勝。同大学のエド・アイストン氏の指導のもと、2024年パリ五輪マラソンで9位、2025年東京世界陸上マラソンでも9位に入ったアメリカを代表するマラソンランナーです。2026年4月のボストンマラソンでは2時間05分41秒で自己ベストを1分以上更新していました。

STRYD社はパリ五輪に向けた準備の段階からヤング選手のトレーニングをサポートしており、ニューヨーク、ボストン、世界陸上などレースのたびに、STRYDのデータで振り返る分析記事を公開しています。主な活用は次のとおりです。

  • レース戦略づくり:パワーデータ、コースの高低差、気象条件、過去のレースを組み合わせて目標タイムと目標パワーを設定。パリ五輪では予測より約70秒速く走り、下り坂で積極的に出力を上げて順位を押し上げました。
  • 練習の質の把握:今夏は週110〜136マイル(約177〜219km)を走り込みながら、ロング走の平均パワーが6月から9月には約10%出力上昇。接地時間も短くなりました。
  • コンディションの確認:2025年の世界陸上前に足首をひねった際は、走りのフォームを可視化する「Footpath」で回復の経過を確認。今回もバランス指標で走りの状態を確かめながら練習を続けました。
  • レースの振り返り:グレート・ノース・ランでは平均392Wで走り、クリティカルパワー(CP)は385Wから397Wへ上昇。シカゴに向けた目標パワーの根拠になりました。

ポイント1:バランス指標で「走れる状態か」を確かめる

STRYDのバランス指標

STRYDのバランス指標は、1歩ごとの左右の配分を示します(50%が左右均等)。ハムストリングの損傷後も、この指標から無理のない強度を保てていることが読み取れたといいます。

ヤング選手は練習量を大きく落とさず、損傷後に行った2回のロング走では、今夏いちばん良かったロング走とほぼ同じ(差は約1%)パワーを出していました。


ポイント2:「均等なタイム」より「均等な出力」

シカゴでの平均パワーは、ボストンマラソンやグレート・ノース・ランとほぼ同水準。距離と気温を考慮すると、3レースの中で最も力強い走りでした。

  • スタートから22マイル(約35km)まで、各マイルのパワーはレース平均の±2%以内
  • 中間点は1時間02分32秒
  • 後半はタイムで19秒遅かったものの、パワーは前半より0.5%高い

タイムが落ちても出力は落ちていない――ペースだけを見ていると気づけない事実が、パワーなら見えます。


ポイント3:残り3マイルの勝負どころ

23マイル以降のスパートのパワーデータ

23マイル目は集団が様子見になり、レース中で最も遅い1マイル4分58秒(1km約3分05秒)。パワーも平均を2.6%下回りました。

23.2マイル地点で前の選手が落ちてくるのを見たヤング選手は仕掛けます。約5分間のスパートを、100秒ずつ3段階に分けてビルドアップ。24マイル目は4分38秒(1km約2分53秒)で、23マイル目より5%高い出力。3マイル目以来の最速ラップで、この差をゴールまで守り切りました。

  • 24マイル目は23マイル目に比べ、ストライドが4%長く、接地時間が5%短い
  • 最後の100mでもレース平均より2%高いパワー

22マイルまで出力を一定に抑えていたからこそ、平均より4%近く高いスパートを出す余力が残っていたのです。


ポイント4:最後まで落ちなかった「バネ」

レッグスプリングスティッフネスの推移

1歩ごとに脚がどれだけ効率よく反発しているかを示す「レッグスプリングスティッフネス(LSS)」は、最初の10分と最後の10分を比べても98%を維持。グレート・ノース・ランでは約1時間保てた水準を、今回はその約2倍の時間保ったことになります。最後の5kmでは左右バランスがむしろ均等に近づき、損傷した脚をかばう様子は見られませんでした。


市民ランナーが活かせること

  • レース前半は「出力」をそろえる:坂や風でペースがぶれても、パワーを一定に保てば後半の余力が残ります。
  • 練習の変化は数値で確かめる:ロング走のパワーや接地時間、CPの推移を見ると、走力の伸びが客観的にわかります。
  • 左右バランスやLSSで走りの状態をチェック:疲れや違和感でフォームが崩れていないかを確認する材料になります。

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※本記事はSTRYD社のブログ記事(英語原文)およびSTRYD社が公開した過去の分析記事をもとに、アオイロが日本語で再構成したものです。※STRYDは医療機器ではなく、怪我の診断や治療を目的としたものではありません。痛みや怪我がある場合は医師の判断に従ってください。

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